東京高等裁判所 昭和54年(く)327号 決定 1979年8月28日
少年 J・H(昭三九・二・一六生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣意は、少年の抗告申立書に記載されたとおりであるから、これを引用する。
所論は結局、少年を初等少年院に送致した原決定の処分が著しく不当であるというのであるが、少年保護事件記録及び少年調査記録によると、少年は中学三年時からラジオの深夜放送やCB無線にこつて夜ふかしをしそのため朝寝坊をする等の理由により遅刻・怠学をすることが多く両親が注意すると反抗して暴行を加えるといつたことをくり返し、昭和五三年一〇月二三日には寝ている少年を説得しに来た母親に殴る、蹴るなどの暴行を加え全治一か月を要する肋骨不全骨折の傷害を負わせ、右家庭内暴力と怠学を内容とするぐ犯保護事件により、昭和五三年一二月一二日から同月二五日までの間東京少年鑑別所に収容のうえ、同月二五日東京家庭裁判所八王子支部で不処分決定を受けたものであるが、その後も少年の素行は改まらず、三学期は一日も登校しないまま昭和五四年三月中学校を卒業し、同年四月二〇日ごろから六月一〇日ごろまで○○電機に勤めたものの怠業が多く自然退社の形となり、この間両親に対する暴力行為はますます激化し、最近では菜切包丁などを持ち出して自己の要求を通そうとするまでに至つていること、少年は前回のぐ犯保護事件の調査・審判の際、もう一度一生懸命勉強して工業学校を目指してやつてみたいと述べていたのに拘わらず、三学期は一度も登校すらしなかつたこと、少年は自己中心的な性格でわがままであり社会的に未熟であること、少年の両親は少年に対する監護教育能力を欠いていることが認められるのであつて、これらの事実からすれば、少年についてはすでに在宅保護の限界を超えていると考えられるから、少年を初等少年院に送致した原決定はやむをえないものというべく、これが著しく不当であるとはいえない。
よつて、本件抗告はその理由がないから、少年法三三条一項により主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 坂本武志 裁判官 門馬良夫 小田健司)