東京高等裁判所 昭和54年(ネ)1154号 判決 1981年12月17日
控訴人 佐渡裕子
右訴訟代理人弁護士 栗山和也
同 五百蔵洋一
同 栗山れい子
同 大脇雅子
被控訴人 学校法人慈恵大学
右代表者理事 名取禮二
右訴訟代理人弁護士 高橋明雄
同 片山和英
右訴訟復代理人弁護士 大塚明良
同 鎌田正聰
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一求める裁判
一 控訴人
1 原判決を取消す。
2 控訴人が被控訴人に対し看護婦として被控訴人大学附属病院本院の本館手術室に勤務する権利を有することを確認する。
3 訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文第一項と同旨。
第二主張
当事者双方の主張は、次に付加、補正するほか原判決事実第二に摘示するとおりであるから、これを引用する。
一 控訴人
1 看護婦の産前休暇取得による本院総婦長室付への移動は手続上の措置にすぎず、本件における控訴人の総婦長室への移動は配置転換としての実質を有するものではない。
2 仮に、被控訴人大学の附属病院において看護婦が産前休暇に入ると同時にその所属を変更して本院総婦長室付に配置転換する慣行が存在するとしても、右慣行は、昭和四四年、被控訴人と訴外慈恵医大労働組合との間で取りかわされた「病欠産休による一時的欠員は臨時職員を代替要員として配置する。」との覚書の趣旨に反するものである。
二 被控訴人
1 前記控訴人の主張1は争う。
2 同2は争う。控訴人主張のような内容の覚書が取りかわされたことはない。
第三証拠《省略》
理由
当裁判所も控訴人の本訴請求は理由がないと判断するが、その理由は次に付加、補正するほか原判決の理由説示(原判決一六枚目―記録三三丁―表八行目冒頭から同二〇枚目―記録三七丁裏―一一行目の「棄却することとし、」まで)と同一であるから、これを引用する。
一 原判決一七枚目―記録三四丁裏七行目の「第一一号証、」の後に「第一〇六号証、」を、同一〇行目の「認定に反する」の後に「原審及び当審における」をそれぞれ加える。
二 原判決二〇枚目―記録三七丁―表二行目の末尾に「しかし、従前の勤務場所から総婦長室付に所属を変更されるのであるから、これが配置転換の実質を有するものであることに異同はない。」を加える。
三 原判決二〇枚目―記録三七丁―表三行目の末尾に「なお、成立に争いのない甲第一〇五号証の一ないし九によれば、被控訴人が作成した控訴人に対する給与支給明細書の所属欄に、昭和四七年五月分では四五五八と、同五〇年二月ないし六月分、同年一二月分及び同五一年一月分では四五八二と、同年三月分では四五四九とそれぞれ記載されていることが認められ、当審における控訴人本人尋問の結果によれば、右四五五八は5B病棟、四五八二は本館手術室、四五四九は歯科外来を意味する番号であることが認められるけれども、前述の総婦長室付への配置転換は手続上の措置にすぎないのであるから、給与支給明細書の所属欄の記載が産前休暇又は育児休職前の旧勤務場所のままで総婦長室付に変更されていないとしても、別段異とするには足りず、このことをもって以上認定の事実を左右すべきものとすることはできない。」を加える。
四 原判決二〇枚目―記録三七丁―表八行目の「見出しがたい。」の後に「なお、控訴人は右慣行が昭和四四年に被控訴人と訴外慈恵医大労働組合との間で取りかわされた『病欠産休による一時的欠員は臨時職員を代替要員として配置する。』との覚書の趣旨に反するものであると主張し、原審における控訴人本人尋問の結果により成立の認められる甲第二五号証(慈恵大労組ニュース第二〇六号)には、その頃右両者間に前記の趣旨の確認がなされた旨の記載があるけれども、原審における証人大津陽一の証言によれば、前同号証は前記労働組合のニュースにすぎないことが認められるのであって、これに前述の記載があるからといって直ちに右両者間に同趣旨の覚書が取りかわされたとの事実を認めることはできない。そして、他に右事実を認めるに足りる証拠もないばかりでなく、前記記載の文言を検討しても、右慣行がその趣旨に反する理由を見出すことはできないから、控訴人の右主張も採用することができない。」を加える。
五 原判決二〇枚目―記録三七丁―裏一一行目の「棄却することとし、」とあるのを「棄却すべきである。」と改める。
よって、これと同旨に出た原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条本文、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡垣學 裁判官 手代木進 上杉晴一郎)