大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(ネ)1334号 判決

一 当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がなく、失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、原判決記載の「理由」の四の項を次のとおり変更するほか、原判決記載の理由と同一であるから、これをここに引用する。

しかして、イ号物件、ロ号物件の各構成と本件考案の構成を対比するに、イ号物件の構成(1)(2)(3)(7)、ロ号物件の構成(1)´(2)´(3)´(7)´の各要件が本件考案の構成1237の各要件をそれぞれ充足することは当事者間に争いがないので、次に、イ号物件の構成(4)、ロ号物件の構成(4)´の要件が本件考案の構成4の要件を充足するか否かについて検討する。

(一) 本件考案の構成4の要件は、「<省略>形側面枠には遮蔽枠が着脱自在に取付けられていること」であるから、本件考案は、少なくとも「遮蔽枠」を必須の要件とするものである。

ところで、考案とは、自然法則を利用した技術的思想の創作であつて、物品の形状、構造又は組合せに係るものであり(実用新案法第一条、第二条)、登録実用新案の技術的範囲は、願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の記載に基いて定めるべく(同法第二六条、特許法第七〇条)、右明細書の用語は、その有する普通の意味で使用し、かつ、明細書全体を通じて統一して使用し、特定の意味で使用しようとする場合においては、その意味を定義して使用すべきものである(実用新案法施行規則第二条、様式第三の備考8)。

そして、普通に、「枠」とは、「木・竹などの細い材を組み合せて造り、器具の骨または外縁としたもの」、「物の周囲を囲む組立て物」等の意味を有する語であつて、周囲を囲んだ状態の構成をいうのがもつとも通常であり、成立に争いのない甲第一号証によれば、本件考案の「実用新案登録請求の範囲」及び「考案の詳細な説明」の項には、「側面枠1には遮蔽枠8を着脱自在に取付け、」「遮蔽枠8の受具9、10を……固装した……」と、また、「考案の詳細な説明」の項には、「本考案は、前記のように、遮蔽枠を着脱自在に設けてあるから、中間の遮蔽枠を取外すことにより集団飼いができ、また、各側面枠に取付ければ、一頭飼いに簡単に切換えることができる。」とそれぞれ記載され、実施例を示す図面には梯子を横にした状態の形状を有する枠体が示されていることが認められるから、これらを併せ考えれば、本件考案の構成要件4にいう「遮蔽枠」とは、「遮蔽用の枠体」を意味するものと解するのが相当である。そして、本件考案においては、各ケージ間の仕切りがかかる「遮蔽用の枠体」によつて構成されていることにより、枠体としての形状を維持したまま着脱することが可能であり、その着脱が自在にできるものと認められる。本件考案については、その明細書及び図面上、「遮蔽枠」自体の分解、組立可能の構成及び作用効果については、全く示されておらず、ただ、「<省略>形側面枠」と「遮蔽枠」との相互着脱及びその作用効果が示されているにとどまるから、「遮蔽枠」は、上来の説示に徴し、それ自体一体のものとして記載されたものと解するのほかはない。

この点について、控訴人は、本件考案の構成1の要件においては、<省略>形状につき「<省略>形側面枠」という語も用いられているから、本件考案の明細書の「枠」に、四方を閉鎖されたいわゆる枠体に限定する意味をもたせたものとは解せられない、と主張しているが、前掲甲第一号証によれば、これは一応<省略>形となつて飼育檻本体のまわりを縁どり囲む機能を有しているところから、特に、「<省略>形側面枠」という造語を用い、その意味を限定ないし定義しているものと解せられるので、これによつても前示判断を左右することはできない。

なお、右の「遮蔽枠」を「それ自体の形状、構造を有していなければならないものではない」とし、その「遮蔽枠」をもつて、「飼育檻本体の中間を仕切ることによつて、豚を一頭飼い、集団飼いに交互に切換えることができる作用効果を奏する程度に仕切る部材」とか、ひいて、単なる「仕切部材」ないし「中仕切り」などと解することは、「遮蔽枠」自体の構造が問題となる本件考案については、その明細書上「遮蔽枠」について控訴人主張のような特定の用語法による旨をうかがわせる記載がないばかりでなく、飼育檻を仕切ることが極めて一般に行なわれている本件考案に係る分野においては、その技術的範囲を不当に広範、不特定なものとし、さらに、作用効果ないし機能自体について、技術的範囲ないし権利を主張することになるから、許されないことは明らかである。

(二) 他方、イ号物件及びロ号物件の各構成をみると、前示認定(原判決の「理由」三の項)のとおり、イ号物件の構成(4)の要件は、

横桟の差込み孔に下端を、<省略>形側面枠の上辺水平部の差込み孔に上端を、それぞれ嵌合した縦桟(等間隔で一〇本)と、該横桟とから成る仕切部材が、該<省略>形側面枠に取外し可能に取付けられていること、

ロ号物件の構成(4)´の要件は、

横桟の差込み孔に下端を、<省略>形側面枠の上辺水平部の差込み孔に上端を、それぞれ嵌合した縦桟(等間隔で一〇本。その上下両端部に緩衝材としてプラスチツク製鍔付キヤツプが嵌合されている。)と、該横桟とから成る仕切部材が、該<省略>形側面枠に取外し可能に取付けられていること、

であつて、本件考案が必須の要件としている前示「遮蔽枠」(遮蔽用の枠体)を具備するものではない。そこにあるのは「仕切部材」、すなわち、縦桟8″8″……と「一本」の横桟8´(原判決添付第一及び第二物件目録)とから成る仕切用の部材のみであつて、この仕切部材は、<省略>形側面枠から取り外すと、その構成要素である一本の横桟と各別の一〇本の縦桟とに必然的に分解してしまうものであるから、この点において両者はその構成を明らかに異にするものである。

(三) 右のような構成の相違に伴ない、本件考案とイ号物件、ロ号物件との間では、作用効果においても、次のような差異があるものと認められる。

本件考案の場合は、枠体としての形状を維持したまま着脱することが可能であり、その着脱が自在にできるという利点がある反面、遮蔽枠の仕切棒が一本折損すれば、遮蔽枠全体を別のものと代えるか、折損した仕切棒を切断して新しい仕切棒を溶接するかしなければならない欠点もある。

イ号物件、ロ号物件の場合は、全体が現地組立てができ、これにより輸送が楽になるとともに、部材が腐蝕、折損してもその部材を容易に交換できるという利点がある反面、その仕切部材は取外すとバラバラになつてしまい、組立てる際には縦桟を横桟と側面枠の差込み孔に一本づゝ挿入して組立てるという面倒な作業を要するという欠点がある。

(四) したがつて、イ号物件の構成(4)、ロ号物件の構成(4)´の要件は本件考案の構成4の要件を充足しないものである。

控訴人は、本件考案の「遮蔽枠8」は「中仕切り8」と解すべきであると主張しているが(前記「控訴人の主張」二の項)、前示のとおり、右「遮蔽枠8」とは「遮蔽用の枠体8」と解すべきものであり、これを控訴人主張のように解すべき根拠はないから、その主張は採用することができない。

二 そうすれば、原判決は結局以上の理由により正当であるから、その余の点について判断するまでもなく本件控訴を棄却する。

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