大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和54年(ネ)634号・昭53年(ネ)2482号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

<証拠>によれば、宇田川が譲受けた右教室は、本件事故当時被控訴人が小樽で開設していたダンス教室と同一場所にあり、宇田川は右譲受後昭和四六年一月まで右ダンス教室を経営したが、その純益は、月一〇万円程度に止まつたことが認められるけれども、被控訴人と宇田川のダンス教師としての経験や技量を度外視して宇田川の右収益から被控訴人の収益を推測するのは妥当でなく、また、ダンス教室の経営が軌道に乗るにはある程度の期間を要するとみるのが妥当であるから、これら事実は、被控訴人の昭和四八年度の事業所得額の算定を左右しない。さらに、被控訴人が小樽の教室の家賃につき昭和四八年以後その支払猶予を求め、同年一〇月分以後その支払を一時しなかつたことは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、被控訴人は、昭和四六年末頃から再三にわたつて右家賃の支払猶予を求めたことがあり、被控訴人が金銭に窮していたことが認められるけれども、<証拠>によれば、右は不動産業を営む被控訴人の弟岸本幸雄の業績不良のため、被控訴人の資産収益が同人の債務弁済等に供せられた結果と認められる。よつて、この事実も被控訴人の昭和四八年における収益額を推測するのに重要なものといえない。<中略>

被控訴人は、営業権喪失による損害の賠償を求めるが、その主張する損害は、将来自己所有の建物でダンス教室を営んだうえ、本件事故の一五年後にその営業権を処分して得る対価をいうのであるが、被控訴人が本件事故にあわなかつたとしても、自己所有の建物でダンス教室を営むことが可能であつたと断ずることはできず、また、かかる教室の営業権は市場性に富むものと認め難く、その処分価格は、諸般の経済状勢のほか、ダンス教室に対する世間の関心動向等により左右されるものであつて、営業権の処分に際し、被控訴人のダンス教師としての経歴、技量が評価され、被控訴人が通常の不動産投資を上廻る利益を得るものと認めるべき事情は見出せない。よつて、被控訴人は、本件事故により受傷した結果、ダンス教室を廃し、またダンス教師としての労働能力を減少せしめられたことに基づきかかる損害を被つたものとなしえない。

(杉山克彦 井田友吉 高山晨)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!