東京高等裁判所 昭和54年(ラ)699号 決定 1979年8月08日
抗告人
リバブージユこと
新延喜一
右代理人
松井久市
相手方
有限会社ホリノーソーイング
右代表者
堀納信治
主文
本件抗告を却下する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
本件抗告の趣旨は、「原決定を取消す。本訴を東京地方裁判所へ移送する。」との裁判を求めるというにあり、その理由は別紙記載のとおりである。
民事訴訟法三三条により移送の申立却下の裁判に対して即時抗告ができるのは、同法三一条又は三一条の二に規定されているように当事者にその移送の申立権が与えられている場合に限られる。同法三〇条の管轄違いに基づく移送は、裁判所がもつぱら職権で行なうもので、当事者が同条の移送を申立てた場合は、単にその職権発動を促すにすぎぬから、右申し立に対し却下の裁判がなされても、当事者はこれに対し即時抗告をすることはできないものと解される。
従つて、本件抗告は不適法であるからこれを却下することとし、抗告費用は抗告人の負担すべきものとして主文のとおり決定する。
(沖野威 奥村長生 谷澤忠弘)
〔抗告の理由〕
原決定は左記のような誤りがあるから取消相成りたい。
(1) 原決定は本訴原・被告間の縫製加工契約につき誤つた解釈をした違法がある。
前記契約は、締結地・加工品の受渡し地及び加工代金の支払地は、いずれも被告の住所地である東京都という一個の契約であり、その内容は、被告が原告に生地等原料を交付し、原告はそれを加工し、原告が被告の住所地に持参し、被告は原告に対し加工代金を支払うという三要素より成つている。
しかしながら、原決定は前記契約の一要素たる支払債務のみを分離して判断した違法がある。
(2) 原決定は原・被告間に代金支払方法につき、何らの合意が無かつたと認定しているが誤つた認定である。
被告は原告と何十回となく取引があつた株式会社スノツブ・ハウスに以前勤務し、原告との取引を担当していたが、現在独立し、原告と取引を始めたものであるが、被告と原告との間で、前記株式会社スノツブ・ハウスと原告との取引と同じ様に取引するとの暗黙の了解によつて契約したものである。
前記株式会社スノツブ・ハウスと原告との取引は、原・被告間の取引と同様であり、加工代金の支払方法についても手形又は小切手で支払う方法によつていたものである。
よつて原・被告間の縫製加工契約の締結地及び履行地はすべて被告の住所地である東京都である。原決定の認定は誤つており、その解釈に違法がある。よつて原決定を取消し、本訴を東京地方裁判所に移送相成り度く、即時抗告の申立をした次第であります。