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東京高等裁判所 昭和54年(ラ)938号 決定 1979年10月05日

抗告人

藤森雄之進ダイヤモンドク

相手方

レジツト株式会社

右代表者

小西達司

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一本件抗告の趣旨は、「原決定を取消す。本件訴訟を福岡地方裁判所へ移送する。」というにあり、その理由は、別紙「抗告の理由」記載のとおりである。

二そこで判断するに、訴訟移送申立却下の裁判に対して民事訴訟法第三三条による即時抗告をすることができるのは、同法第三一条または第三一条の二の規定する訴訟の移送の場合のように、法文上当事者に対し訴訟移送の申立権が認められている場合に限られるものと解するのが相当である。

ところで、抗告人は、原審である東京地方裁判所に対し、本件訴訟(東京地方裁判所昭和五四年(ワ)第五三〇九号貸金等請求事件)が同裁判所の管轄に属さないとして、民事訴訟法第三〇条第一項による右訴訟の福岡地方裁判所への移送を申立てたものであり、また、原審は、右訴訟は東京地方裁判所の管轄に属するものであつて、右移送申立は理由がないとして、同申立を却下したものであることは、本件記録及び原決定に照らし明らかであるところ、民事訴訟法第三〇条第一項による訴訟の移送については、当事者にその移送の申立権を認めていないことも、法文上明らかである。

そうすると、抗告人のなした本件訴訟移送の申立は、単に原審裁判所に対してその職権の発動を促すにすぎないものであつて、これを却下されたとしても、民事訴訟法第三三条による即時抗告をすることはできないものといわなければならない。

三よつて、本件抗告はこれを不適法として却下することとし、抗告費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(沖野威 奥村長生 谷澤忠弘)

〔抗告の理由〕

一、抗告人と相手方との取引は福岡市に於てダイヤモンドクレジツト株式会社(所在地福岡市中央区天神一丁目一二番二四号、電話番号七一二―二五三三)との間に締結したものである。原決定に於て東京地方裁判所は商法第五一六条第一項及び民訴法第五条により同裁判所が管轄を有すると、その理由に於て説示しているが、同法各条を適用するのであれば本訴請求に対する抗告人の義務履行地は福岡市であるから、福岡地方裁判所へ移送するのが至当である。

二、本訴が提起される前、昭和五三年福岡簡易裁判所(ロ)第三二五九号及び昭和五四年福岡簡易裁判所(ロ)第九七五号により、二回に亘り、相手方を債権者抗告人を債務者とする支払命令を相手方は福岡簡易裁判所に申立てた。請求内容は本訴と同趣旨であつたが抗告人としては内容不服につき、異議を申立てた。この場合、その訴訟手続は福岡地方裁判所へ移行される事は民事訴訟法第四四二条により明らかである。

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