東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)12号 判決
一 請求原因一及び同二の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、原告の主張する取消事由の有無について検討する。
1 原告は、本件商標が「果実酒」以外のその他の酒類(薬用酒を除く。)について使用される場合にも商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるという。
しかしながら、本件商標の「CABINET」が「高級ドイツワイン」の品質表示語として我が国で一般的に慣用されているものであることは原告の自認するところである。そして、「ワイン」その他果実または果実に水等を加えて発酵させ、または、これを成分として製造する果実酒とそれ以外の他の酒類とでは原料の種類その他が異なり、酒類の分野ではその性格、種類、これに対する嗜好その他を別異にするものであるから、酒類がもともと人の鋭敏な基礎感覚に係る嗜好品として取引される取引の実情を考え合せれば、たとえ原告主張のように近時我が国においてワインの消費が増加したり、同一店舗で販売されたり、酒類の包装、容器のデザインが多様化、多彩化する等の事情があるとしても、それによつて品質の誤認、すなわち、本件商標の「CABINET」が「果実酒」以外の他の酒類について使用された場合にそれを「高級ドイツワイン」あるいは「ぶどう酒」に係るものと誤認するおそれがあるとは、本件に顕われたすべての証拠をしらべても、認められない。原告の主張は理由がない。
2 原告は、本件商標をドイツワイン以外の酒類について使用することは公の秩序、善良の風俗に反するものであるという。
しかしながら、商標法第四条第一項第七号に規定する公の秩序または善良の風俗を害するおそれのある商標が、商標の構成自体において公序良俗を害するおそれがある場合だけではなく、当該商標を指定商品に使用することが公序良俗を害する場合をも包含するとしても、ここに「公序良俗を害するおそれがある」とは、我が国における社会公共の利益に反し、または、一般的道徳観念に反するおそれがあることをいうものと解すべきであるから、原告主張のように本件商標と類似する「KABINETT」の語がドイツワイン法においてドイツワインの品質格付けの表示語として用いられているとか、「高級ドイツワイン」と品質誤認のおそれがある等の事由をもつて公序良俗を害するおそれがあるとするのは当らない。そして、本件に顕われた全証拠を検討しても他に右事実を認めるに足りるものはない。原告のこの主張も理由がない。
三 よつて、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は失当として棄却することとする。