大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)30号 判決

一 請求の原因1ないし3の事実については、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決を取消すべき事由の存否について判断する。

1 原告は、まず、本願発明の特徴である「転写前に液体現像剤で現像することによつて得られる画像面から非画像部に付着した現像剤を除去する」という技術が第三引用例に記載されているとした審決の認定が誤りであると主張する。

本願発明の「特許請求の範囲」には、現像した後、「感光体の非画像部に付着した余分な現像剤を上記感光体から除去し、」なる記載のあることは当事者間に争いがないところ、成立について争いのない甲第二号証(本願発明の特許公報)によれば、右の現像後転写工程までの間に余分な現像剤を除去する構成に関しては、「発明の詳細な説明」に、「本発明方法は、現像装置と転写装置の間にクリーニング装置を設けたことを特徴とし、ここにクリーニング装置を取付けることによつて、現像後の現像液が除去されるので、転写体に付着する現像液が最少限度におさえられ、乾いた感じのコピーが得られるばかりでなく、感光体上に余分な現像液が存在しないことによる最も大きな効果は、かりに感光体上に余分な現像液が付着している場合は、転写工程におけるコロナ放電によつて感光体上における非画像部分の現像液中のトナーが転写体がわに引き付けられて転写体に付着し、その転写体に地汚れを生じてしまうが、感光体上に余分な現像液が存在しない場合、上記のごとき地汚れが完全に防止されることにある。」(三欄四三行ないし四欄一二行)との記載が存することが認められる。これに対し、成立について争いのない甲第五号証(米国特許第三、一〇〇、四二六号明細書)によれば、第三引用例は、静電界内で帯電したカラー粒子を光の色又は波長に応じて選択的に移動させることによつて、カラー像を形成することができるが、これを利用して、静電カラー写真又はプリントを得るための装置に係る発明の明細書であるところ、第三引用例の第18図及び第19図の装置(電子写真プリントの連続印刷機)にあつては、現像工程の後、カラー像がベース184に転写される工程の前に、「エア スクイジー182」が設けられており、このエアースクイジー182については、「エアースクイジー182がドラム面に送風して、所望されない粒子(unwanted particles)を除去し、ドラム面全体又は一部を乾燥させる。」(六欄四五行ないし四七行)との説明があり、更に、現像粒子もしくはその挙動に関しては、「第9図及び第10図に図解したように、適正カラーの粒子が活性化されて、コーテイング132に付着する。偶発的に追随した粒子は、エアージエツト182によつて、除去され(る)。」(同欄六〇行ないし六三行)、「現像材トレイ176中の電極180よりも下方に配置した超音波発生器194が、カラー現像粒子をドラム面にほぼ直角に衝突させる。」(同欄五三行ないし五六行)、「好ましくは不導電材から成るトレイ176は、例えば、軽油や四塩化炭素のような誘電液中に分散させた第4図に図解したタイプのカラー現像粒子混合物178を収めている。」(同欄三四行ないし三八行)との記載のあることが認められる。そして、第三引用例には、第15図及び第16図の装置についての説明においても、「グリツドを通過することで適当な色の粒子が帯電して層66に付着し、上述のようにカラー像を形成する。」(五欄五二行ないし五五行)との記載がある。右の第三引用例の各記載や第18図の図示等を総合して考えると、第三引用例における実施例の詳細については、必ずしも十分明瞭な記載ばかりではないが、少なくとも、第三引用例の第18図及び第19図の装置にあつては、導電コーテイング面132には、適正カラー粒子は、静電的吸引力によつて吸着しているものと解するのが合理的である。そして、適正カラー粒子が、静電的吸引力によつて吸着しているが故に、前記のエアースクイジー(エアージエツト)182によつて除去されることがないのに対し、「偶発的に追随した粒子」は、エアースクイジーによつて除去されるものと考えるのが相当である。したがつて、第三引用例の第18図及び第19図の装置の説明において、「エアースクイジー182がドラム面に送風して、所望されない粒子を除去する」とは、原画像に対応する適正なカラー像を形成する現像粒子(適正カラー粒子)に対する「不適正な粒子」を除去する趣旨と解される。このように、第三引用例には、現像工程の後、転写工程の前段階で、静電的吸引力によらないで、偶発的に追随して付着した「所望されない粒子」を除去しようという技術は十分に示されているというべきである。この点、原告は、前記第18図の装置における現像粒子の挙動に関し、「適正カラーの粒子が活性化されて、コーテイング132に付着する。」と記載されているが、これは、「活性化されないで」の誤記であると主張するが、第三引用例における発明の目的ならびに前記認定の記載等からしても、これを誤記とするに十分な根拠を見出すことはできない。更に、第三引用例における前記の「所望されない粒子」とは、具体的には、像形成面の非画像部に付着した現像粒子及び画像部に付着した余分な現像粒子をいうことは、容易に理解され、かつ、非画像部に付着した現像粒子が、転写体の地汚れの主要な原因となることも容易に推認しうることであるから、第三引用例の第18図におけるエアースクイジーが、現像工程の後、転写工程の前に、設けられ、これが、非画像部に付着した現像粒子をも除去するものと解される以上、転写体の地汚れを防止するという効果を奏するであろうことは当業者が容易に認識しうることというべきである。

この点、原告は、転写体の地汚れの原因が感光体の非画像部に現像液に包含されて存在するトナーが転写工程において転写体に移行するところにあると主張するが、転写手段によつて地汚れを起す程度に差があるとしても、転写工程に入る前に感光体の非画像部に付着した余分な現像粒子を含む現像液を除去することが、転写手段のいかんにかかわらず、転写体の地汚れ防止に役立つことが容易に認識しうる以上、原告のこの点に関する主張も採用しえない。

右のとおりであるから、原告の取消事由(一)における主張は理由がない。

2 第三引用例には、前叙のとおり、転写前に液体現像剤による現像によつて得られた画像面から非画像部に付着した現像粒子や液体キヤリアを除去することが記載され、これによつて、転写体に付着する現像液を少なくするとともに、転写体の地汚れを防止するという効果が生ずることが容易に認識しうる以上、審決が相違点(2)についての判断に当つて、本願発明は、第三引用例に記載された技術を感光体を使用する静電印刷に適用したにすぎないものとした点にも、誤りはない。

そして、第一引用例及び第二引用例に審決認定のとおりの記載があることは争いのないところであるから、本願発明は、第一引用例ないし第三引用例の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとした審決の判断は正当であつて、審決には違法の点はない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註その一〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

「移動する感光体上に原稿画像に対応する静電潜像を形成し、上記感光体とこれと一定の間隔を保つて配置されている対電極との間に現像液を供給して上記静電潜像を現像し、上記感光体の非画像部に付着した余分な現像剤を上記感光体から除去し、現像液を除去された上記感光体に転写体を接触させた状態でこの転写体の背後からコロナ放電を行つて上記転写体に感光体上のトナー像を転写し、上記感光体上に残存するトナーをクリーニング手段で除去することにより、上記感光体を繰返し使用することを特徴とする静電的印刷方法。」(別紙図面(一)参照。)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

図面(一)

<省略>

図面(二)

<省略>

図面(三)

<省略>

<省略>

<省略>

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