大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)93号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告が主張する審決取消事由の存否について検討する。

1 原告は先ず転用困難性の根拠として白金族金属触媒の再生条件の困難性について主張する。しかしながら成立に争いのない甲第二号証ないし第五号証によれば、本願発明は、原告も述べるごとく、従来周知の白金族金属触媒を使用する炭化水素の接触改質法に関し、複数の反応帯域毎に改質条件で運転している間に、白金族金属触媒の活性維持のため、その取出し、供給の制御を独立に行うことにあり、白金族金属触媒の再生を行う技術内容自体は、発明の構成要件となつていないばかりか、明細書の発明の詳細な説明においても、実施例の説明として「各々管15、24及び32を通つて反応器12、20及び28から排除された触媒は、希望するならこの系で再度利用するため図示されて いない再生装置内で再生されうる」と記載されているだけで、全く本願発明の技術内容に含まれていないことが明らかであるから、この点に関する主張を転用困難性の根拠とすることは失当であり、採用することはできない。

2 また、原告は触媒の使用条件の差について主張する。しかしながら、改質反応における水素分圧についてみると、前掲甲第二号証及び成立に争いのない甲第六号証の一ないし五によれば、本願発明の具体的圧力である二・三ないし六気圧(三五~一〇〇〇psig)(甲第二号証六頁二行から三行)は公知技術Bの一〇〇ないし二〇〇psig(七・〇三~一四・〇六気圧)(甲第六号証の四、八五頁一五行)を包含しているので、少なくとも右重複範囲においては、技術的に同一といわざるをえない。したがつて、前記のとおり炭化水素の接触改質法における白金族金属触媒の使用が周知であること、弁論の全趣旨によつて認められる白金族金属触媒が原料として高価であり、触媒寿命が比較的長いことなどをも考慮すると、この点を転用困難の根拠とする主張は採用することができない。

3 前掲甲第六号証の四によれば、公知技術Bは、一般的な触媒系統の記載として、改質条件下で反応塔の一方から触媒を供給し、反対側から使用済触媒を取出す制御の方法を記載しており、その制御の目的が触媒の活性維持のためであることが明らかであり、その制御上、触媒としてクロミア・アルミナを採用するための特別の条件ないし考慮は示されていない。

また前掲甲第六号証の三によれば、公知技術Aは白金族金属触媒を使用した固定床式の複数の反応帯域を使用しており、接触改質及び触媒の再生等の操作は各反応帯域毎に独立に行われていることが認められる。

そして前記認定のように白金族金属触媒が接触改質法の触媒として周知であること、また原料として高価であり、触媒寿命が比較的長いという経済的事情の外、白金族金属触媒を接触改質法に使用する上で、他の触媒に比較して、反応装置の選択(固定床式、移動床式、流動床式等)ないし反応帯域からの取出し、供給に関し特別の配慮を要するような技術的条件は、本件全証拠によつても認め難いことなどを考慮すると、公知技術Bに、白金族金属触媒を使用する公知技術Aを結合することの困難性をいう原告の主張は何れにしても採用することはできない。

三 そうすると、審決には原告の主張するような判断の誤りはないから、これを理由としてその取消を求める原告の本訴請求は失当として棄却すべきである。

〔編註〕 本願発明に関する事項は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

原告は、昭和四四年九月二九日名称を「改質法」とする発明(以下「本願発明」という。)について特許出願した(昭和四四年特許願第七七〇二〇号)ところ、昭和四九年七月二七日拒絶査定を受けたので、同年一一月二九日審判を請求し、昭和四九年審判第一〇一二八号事件として審理されたが、昭和五四年一月二六日「本件審判の請求は成り立たない。」との審決があり、その謄本は同年二月七日原告代理人に送達された。なお、この審決に対する出訴期間として三か月が附加されていた。

二 本願発明の要旨

複数の反応帯域に配置した白金族金属触媒と炭化水素供給原料とを水素の存在下で接触させ、次いで、得られた改質炭化水素を回収することから成る、炭化水素供給原料の改質方法において、複数の前記反応帯域の少なくとも一つの一方の側に新しい触媒を周期的に供給し、かつ同時に、触媒活性が再生を必要とするまで低下する以前に該反応帯域の反対側から使用済触媒を取出し、そして、すべての反応帯域を改質条件下で運転している間に触媒のかかる取出し及び供給の制御を各反応帯域毎に独立して行うことを特徴とする前記方法。

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