東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)96号 判決
一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の審決取消事由の存否について検討する。
1 審決取消事由の1について
成立に争いのない甲第二号証によると、引用例のものにおける耐熱塩ビ製内側パイプの外周表面には、別紙図面(〔編註〕省略)(2)のとおり連続した多数の突起が同パイプと一体的に形成されていること及び右突起は、外側パイプ3と内側パイプの間に充填された発泡樹脂等の断熱材と内側パイプとの固着状態を確実にし、ひいて、内外両パイプがずれることのないようにすることを目的としたものであることが認められる。
ところで、前掲甲第二号証によると、前記突起の材質については、引用例中に明文の記載はないけれども、その全体の記載内容からみて、内側パイプと一体的に形成されたものである関係上、同パイプのそれと同一のものであると考えられる。しかして、このように材料が同一であつても、前記のとおり内側パイプの外周表面に多数連続して形成された突起は、同パイプの壁面を補強する作用効果を有することは、明らかである。
けだし、まず内側パイプに内圧が加わつた場合について考えるに、パイプ壁は、直径方向に膨張すると共に、円周方向にも引張応力を生ずるが、その作用は、直ちに外周表面に形成された突起部分に伝達され、同部分にも引張応力が生ずることとなり、突起部分は、パイプ壁に生ずる右引張応力の一部を負担し、したがつて、突起の大きさや数によつて差異はあつても、右応力に抗する作用を発揮し、また、内側パイプの長手方向に膨張する力が加わつた場合にも、この力は突起部分をも引延ばすように作用するので、右突起部分は、前同様その大きさや数によつて差異はあつても、これに抗する作用を発揮し、更に、内側パイプを曲げようとする力に対しても、突起は、パイプと一体に形成されていることからこれに抗する作用を発揮するであろうことは容易に理解できるからである。そして、引用例のものにおける突起をこのように解するについて妨げとなる事情は存しない。
そうすると、引用例のものにおける内側パイプの外周表面に形成された突起は、右パイプとその外側にある発泡樹脂等の断熱材や外側パイプとのずれを防止する目的で形成されたものであるにしても、同時にかつ当然に、内側パイプの強度を高める作用効果を有しているものであり、しかも、この程度のことは、当業者であれば、引用例からたやすく読み取ることができるものというべきである。
したがつて、審決が、引用例のものにおける内側パイプの突起は、パイプの強度を増大する作用をもつ補強材に当るとした点に誤りはない。
2 審決取消事由の2について
当事者間に争いのない本願考案の要旨によると、本願考案は、樹脂内管の外周に補強材を捲着することが要件とされているところ、「捲着」の語は、捲きつけることを意味すると解されるから、右の語からは、まず、樹脂内管と補強材とは別体のものであるとするのが、自然であろう。そして、成立に争いのない甲第三号証によると、本願考案の実施例について、考案の詳細な説明中には、「樹脂内管1の外周に繊維や針金等で形成した補強ネツト、金属や樹脂等のコイル状補強材等の補強材2を被覆したり巻装したりしてある。」との記載がある。これらと同号証の図面(別紙図面(〔編註〕省略)(1))中の第一図や第二図とを併せ考えると、右各図における補強材2と樹脂内管1とは別体のものであることが推認される。
しかしながら、「捲着」なる語についてその「着」の意義にも配意して更に検討するに、右の語が、常に被捲着物たる樹脂内管と捲着物たる補強材とが別体である場合のみを指称し、それ以外の場合、例えば、成形時において管の外周面に管と同一材料がらせん状突起として一体的に形成されたり、管が形成された後にこれにらせん状突起を固着させて一体化させるような場合をも、すべて排除する程にしかく一義的に明確な語義を有しているものとは解せられない。かえつて、前掲甲第三号証によると、本願考案における考案の詳細な説明中には、前出の記載に続いて、「補強材2としてコイル状の樹脂巻き周リブを第三図のように樹脂内管1の外周に周設してもよい。また、他に樹脂内管1の周壁内に第四図のようにコイル状骨材5を埋設しておいてもよい。」との記載があり、これらの点を併せ検討すると、本願考案は、次に述べるとおり、補強材と樹脂内管とが別体のものに限定されないと解される。
すなわち、前記第三図の場合には、補強材2は、コイル状の樹脂巻きであるとの記載からみて、樹脂内管と同一ないし同種の材料であり、しかも、「リブ」とは通常板や管における薄肉部分を補強するための助材ないし力骨を意味し、したがつて、管の「周リブ」といえば、通常管の外周面にひれや畝などのような形で突出して設けられた補強のための部分を指称するものと解されるところ、これと考案の詳細な説明における「周設」の語を含む前認定の記載内容とを併せ考えると、樹脂内管を押出成形する際に、同時に樹脂巻き周リブを押出成形し、この両者が半溶融状態にあるうちに、右周リブを樹脂内管外周面に装着することも充分予想されるところであり、この場合は、右装着後に樹脂内管と補強材たる周リブとは接合して一体となるものと解するのが相当である。なお、樹脂内管の周壁内にコイル状骨材を埋設する第四図の場合も、内管と骨材との一体化の一例と解することができる。
そうしてみると、本願考案における補強材については、樹脂内管と別体である場合があると共に、両者が一体化している場合をも包含しているとみるべきであり、したがつて、審決がこの点について本願考案と引用例のものとの間に実質的差異がないとしたことに誤りはない。
なお、以上1、2のとおりであるから、本願考案の作用効果も、引用例のもののそれと対比して格別のものであるとは考えられない。
三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。