東京高等裁判所 昭和55年(う)1511号 判決
被告人 浅井郁男
〔抄 録〕
職権をもって原判決の事実認定について調査するに、原判決がその証拠の標目の項で記載するところは、判示事実全般にわたって証拠を的確に挙示していないきらいがあり、特に、原判決は、その罪となるべき事実の第三の(二)において無免許運転の事実を認定判示し、証拠の標目の項において、右事実につき、被告人の原審公判廷における供述、被告人の司法警察員(昭和五五年五月一三日付け)、検察官(同月一四日付け)に対する各供述調書及び電話用紙(「免許証の有無の照会について」と題するもの)を掲げているが、右の被告人の供述及び供述調書はいずれも右無免許運転の事実の自白であり、電話用紙は被告人が公安委員会の運転免許を受けていなかったことを証明するにすぎず、被告人が判示の日時、場所で自動二輪車を運転した点については、被告人の自白を補強する証拠を全く挙示していない。そうすると、原判決には、その判示第三の(二)の無免許運転の事実について自白と無免許を証明する証拠だけで被告人を有罪とした訴訟手続の法令違反があり、この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、この点で原判決は破棄を免れない。
(新関 下村 小林)