東京高等裁判所 昭和55年(け)7号 決定
被告人 黒田捷二
〔抄 録〕
記録によれば、被告人は昭和五四年一一月二二日宇都宮地方裁判所において頭書被告事件について禁錮一〇月、三年間の執行猶予つき判決の宣告を受け、同年一二月五日原審弁護人において控訴の申立をしたところ、東京高等裁判所は、同年一二月二五日、控訴趣意書差出期間最終日を昭和五五年一月三〇日と指定し、その旨の通知書を弁護人選任照会書とともに被告人宛に発送し、これらは昭和五五年一月二日被告人に送達されたこと、その後同月二八日弁護人選任届が同裁判所に提出されたが、被告人及び弁護人からは右期間内に控訴趣意書の差し出しがないまま最終日を徒過したこと、このため同裁判所は、同年二月七日に至り、刑訴法三七六条一項、同規則二三六条所定の期間内に控訴趣意書の提出がないことを理由に同法三八六条一項一号により控訴棄却の決定をしたことが明らかである。所論は、本件の場合のように被告人に対して控訴趣意書の差出期間最終日が指定、通知された後、同期間内に弁護人が選任された場合には、改めて弁護人に対しても右期間の通知をなすべきものであり、本件弁護人に対してはその通知がなかったため右期間を徒過したものである旨主張するのであるが、本件弁護人に対し改めて控訴趣意書差出期間の通知を要するものでないことは刑訴規則二三六条の規定にてらし当然のことであって、同裁判所の措置に何ら違法、不当の問題はなく、同裁判所が所定の期間内に控訴趣意書の提出がないことを理由に控訴棄却の決定をしたことは正当である。
(石田 森 浜井)