東京高等裁判所 昭和55年(ツ)56号 判決 1981年4月28日
上告人
佐藤アキヨ
外三名
右四名訴訟代理人
中西正義
被上告人
有限会社富士見興業
右代表者
佐藤太一
主文
原判決を破棄する。
本件を横浜地方裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人中西正義の上告理由について
記録によれば、昭和五三年二月一七日午後一時三〇分第一審口頭弁論期日において、上告人らは、本件賃貸借契約における賃料持参払いの約定が取立払いの約定に変更された旨主張し、被上告人が右主張事実を認める旨陳述したことは、明らかである。そして、被上告人の右陳述が裁判上の自白に該当し、裁判所は、自白に係る主張事実が真実であると否とにかかわらず、これを裁判の基礎としなければならない拘束を受け、しかも、該拘束力は、控訴審にも及ぶ(民訴法三七九条参照)のであるから、原審としては本件賃貸借契約解除の効力を判断するに当り、賃料の支払いが取立債務であることを当然の前提としたうえで、はたして被上告人が賃料取立ての措置に及んだかどうかを審究すべきであつたといわなければならない。しかるに、原審は、かかる挙に出ることなく、上告人らの賃料一部不払いの事実を認定したのみで、直ちに、本件賃貸借契約の解除が有効であるものと判断しているのであつて、右判断には民訴法二五七条違背の違法があり、それが判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れず、さらに審理を尽させるため、本件を原審に差し戻すこととする。
よつて、民訴法四〇七条に従い、主文のとおり判決する。
(渡部吉隆 蕪山厳 安國種彦)