大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和55年(ネ)1184号 判決 1981年3月16日

控訴人

徳間直三郎

右訴訟代理人

渡辺文雄

山田修

被控訴人

市村倉治

被控訴人

徳田彌惠子

右訴訟代理人

鈴木誠

栃木敏明

被控訴人

小松川信用金庫

右代表者

鈴木秀次郎

右訴訟代理人

平山国弘

外二名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一当裁判所も控訴人の本訴請求はいずれも理由がなく棄却を免れないものと判断するが、その理由は原判決五丁裏七行目から六丁表六行目までを次のとおり改めるほかは原判決理由説示のとおりであるからこれを引用する。

「しかし、右強制執行停止の申立は競落許可決定確定後になされたものであること当事者間に争のないものであるところ、不動産競売手続において競落許可決定が確定すると、実体法上競落不動産につき売買契約が確定的に成立し、競落人は代金支払期日に競落代金を支払うことによつて競落不動産の所有権を取得できる地位を確定的に保有することになるから、競落許可決定確定後に控訴に伴う強制執行停止決定が執行裁判所に提出された(この事実は当事者間に争がない)場合に、執行裁判所が爾後の手続、殊に代金支払期日の指定、支払れた代金の受領、所有権移転登記の嘱託手続を停止することは、右の各手続が競落人の有する右述の地位の実現をはかる手続の実質を有することに鑑み、競落人の有する右の地位を左右することになるものとして許されず、執行裁判所としては、爾後の手続のうちたかだか配当手続を停止し得るに止まると解するのが相当である。

してみると、前記代金支払期日に被控訴人市村の支払つた競落代金を受領し、本件建物につき所有権移転登記の嘱託手続をした執行裁判所の手続に違法の廉はなく、控訴人の再抗弁は採用できない。

従つて、被控訴人市村は適法に本件建物の所有権を取得したものというべきであるから、控訴人が本件建物の所有権を有することを前提とする控訴人の本訴各請求は更に立入つて判断するまでもなく理由がない。」

二してみると控訴人の本訴請求はいずれも理由がなく棄却を免れないものであつて、これと同旨の原判決は相当であるから本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(川上泉 奥村長生 福井厚士)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例