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東京高等裁判所 昭和55年(ネ)1250号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

(四) <証拠>を総合すると、「徐明鎮から貸金の返済を迫られ、朴東寿から本件土地建物につき競売の申立を受けて窮地に立つた控訴人はもともと右貸金は被控訴人直治が区議会議員に立候補した際の選挙費用もしくはその後始末に充てられたと信じていたので、たびたび被控訴人直治へ押しかけて、右競売申立が取り下げられるよう同被控訴人において善処するよう要求したが、同被控訴人も経済的に逼迫していたのでこれに応ずることができなかつたところ、同被控訴人方に以前から出入りしていた訴外衛藤貞夫が、控訴人に確実な債権があれば、それを担保に銀行から金融を得ることも可能だから、控訴人と被控訴人らとの間で公正証書を作成してはどうかとの忠告をしたので、控訴人も被控訴人らもこの忠告に従い本件公正証書の作成を公証人に嘱託した。なおその際、控訴人は控訴人の被控訴人らに対する公正証書上の債権額を、徐の主張する貸金元本金三〇〇万円に、利息及び費用等を加えた四〇〇万円とすることを主張したが、被控訴人らとともに連帯債務者となつた訴外阿部清治が種々計算した結果、公正証書上の債権総額が金三七六万円、毎月の割賦額が金一〇万四〇〇〇円とされた。」との事実を認めることができ、これに反する証拠はない。

(五) 以上認定の事実関係からすると、本件公正証書作成の直前、控訴人と被控訴人直治の間に、被控訴人直治が、訴外徐明鎮又は朴東寿に対する控訴人名義の前記債務を代位弁済すべき義務があるか否かについて法律上の争いがあり、これを解決するため、互いに譲歩して「① 右債務は控訴人において弁済する。② 被控訴人直治は控訴人に対し金三七六万円を支払う。」との合意すなわち和解がなされたとの事実を推認することができる。前出被控訴人直治尋問の結果中右推認に反する部分は措信できないし、他に右推認を覆すに足りる証拠はない。してみれば本件公正証書は、被控訴人直治の右和解金債務を目的とする準消費貸借契約を証するために作成され、その余の被控訴人らは、被控訴人直治の右準消費貸借債務につき連帯保証する趣旨で名を連ねたと解すべく、本件公正証書は、昭和五〇年五月二三日にあらたな消費貸借がなされた旨の記載がなされている点で、事実に副わないが、この程度の相違をもつて公正証書を無効としえないことはいうまでもなく、このことは前認定の経緯により右和解以前に、真実は何人が何人に対しいくばくの債権を有していたかの点とも関係がない。

なお、控訴人主張の抗弁2(二)の事実は、右認定の事実と細部において必ずしも符合しないものがあるが、重要な部分において相隔たるものではなく、従つて右認定が、控訴人の意図に反し又は被控訴人らにとつて著しく予想外のそれである筈はないから、なお右認定は弁論主義の制約に従つたものということができる。

(石川義夫 寺澤光子 原島克己)

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