東京高等裁判所 昭和55年(ネ)3047号 判決
控訴人は、右消滅時効の中断事由として、控訴人が債権者として被控訴人に対し本件土地につき処分禁止の仮処分決定を得た旨主張し、昭和四九年三月七日に右主張の仮処分決定がなされたことについては、当事者間に争いがない。しかしながら、仮処分が消滅時効の中断事由となるためには、右仮処分が時効が問題となる当該権利の保全手段として、したがって本来は当該権利の権利者自身によって申請されたものであることを要し、ただ右権利者の債権者が債権者代位権に基づき当該権利を代位行使するための保全手段として仮処分が申請された場合においては、権利者自身によって申請された場合と同様に、右権利の時効を中断しうるものと解すべきである。すなわち、これを本件についていえば、控訴人の申請にかかる仮処分が加藤喜太郎の有する許可申請協力請求権の時効中断事由たりうるためには、その仮処分が右加藤の請求権の控訴人による代位行使のための保全手段として申請され、認容されたものでなければならない。
ところが、記録によれば、控訴人は、昭和四九年九月七日、本件訴訟を提起して被控訴人に対し、本件土地につき昭和四五年一二月一三日売買を原因とする所有権移転登記手続を求め、その請求の原因として、控訴人は右同日、相原茂久太郎からその代理人加藤喜太郎を通じて本件土地を買受けた旨主張し、ついで昭和四九年一二月二四日には、本件土地は農地であるとして、請求の趣旨を「被控訴人は、本件土地につき控訴人のため秦野市農業委員会に対し農地法三条一項及び同法施行規則による許可申請手続をせよ。被控訴人は本件土地につき前項の許可がなされたことを条件として、許可のなされた日付売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。」と改めたこと、そして昭和五五年二月二〇日に至り初めて、訴の変更申立書を提出して、前記控訴の趣旨として記載したところと同旨の請求の趣旨に変更し、相原茂久太郎は昭和三八年一〇月三一日、第一次売買により加藤喜太郎に対し本件土地を売渡し、同人は昭和四五年一二月一三日、第二次売買によりこれを控訴人に売渡したので、控訴人は債権者代位権に基づき、加藤喜太郎に対する本件土地所有権移転登記請求権を保全するため、同人に代位して同人の被控訴人に対する本件土地所有権移転登記請求権及びその前提をなす許可申請協力請求権を行使する旨主張するに至った<中略>ことが明らかである。してみれば、右昭和五五年に至ってなされた訴の変更前においては、控訴人は、もっぱら、相原茂久太郎からの直接の買主たる自己の権利の行使として、被控訴人に対し許可申請協力義務ないし移転登記義務の履行を求めていたものであって、前記仮処分決定も、同じく控訴人自身の有する被保全権利を前提とする申請によって発せられたものと推断するに難くなく、右仮処分の申請に際して、加藤喜太郎の有する許可申請協力請求権や許可を条件とする移転登記請求権を代位行使する趣旨が表明されたことを窺わせる証拠はない。したがって、控訴人主張の仮処分をもって、当初から右加藤の有する許可申請協力請求権の代位行使のための保全手段としてなされたものと認めることはできないので、これをもって右請求権の時効中断事由とする控訴人の主張は、理由がないものといわなければならない。
(横山 野崎 浅野)