大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(ネ)938号・昭57年(ネ)1029号 判決

一 当裁判所の判決理由は、原判決書中三三丁裏五行目から三六丁裏一〇行までを削除し、右部分に次のA部分を附加し、同三八丁裏八行目から四四丁裏一〇行目までを削除し、右部分に次のB部分を附加するほかは、原判決の理由と同一であるから、ここにこれを引用する。

三 そこで、被控訴人らの抗弁について判断する。

1 抗弁1について

被控訴人らは、小川鋳造が控訴人に対し直接違約金として金一〇〇〇万円を支払うことを約した趣旨は、違約金が結局控訴人に帰属するものであることから、違約金を、東京梱包を通じて控訴人に支払うという手続を省略して、直接、控訴人が小川鋳造にその支払を求めることができることとしたのであつて、小川鋳造としては、違約金を東京梱包又は控訴人のいずれか一方に支払えば免責されるものであるところ、小川鋳造は、東京梱包との間で和解契約を締結し、小川鋳造が東京梱包に対して有する一〇〇〇万円を超える売掛金債権、手形金債権と違約金債権とを対等額で相殺する旨約したから、控訴人に対する違約金一〇〇〇万円の支払義務は免責される旨主張する。

しかしながら、小川鋳造の控訴人に対する違約金支払義務は、小川鋳造が該違約金を東京梱包に支払えば小川鋳造の義務は免責されることを認めるに足る証拠はなく、かえつて、前掲甲第五号証に当審証人中野昭雄、原審証人瀬下順弘の各証言を綜合すると、控訴人は東京梱包に本件特許発明の実施を許諾するにあたり、下請業者を使用することを承諾したが、その際控訴人が最も留意したのは、下請業者が本件特許発明に関する技術を習得し、独自に梱包機の製造販売をすることがないようにすることであり、そのため、資力及び経営能力において劣つている東京梱包では下請業者の小川鋳造を制御することは難しいと考えた控訴人は、小川鋳造に所定の違約事由があるときは、これに違約金を課するとともに、小川鋳造は右違約金を「直接」控訴人に支払うことを約したものであることが認められるところであるから、被控訴人らの抗弁1はその理由がない。

2 抗弁2について

被控訴人らは、抗弁2に記載の事由を挙げて控訴人、小川鋳造間の契約のうちの前記違約金支払条項は公序良俗に違反し無効であると主張するが、右違約金支払条項が被控訴人小川鋳造の窮迫に乗じて挿入されたものであることを認めるに足る証拠はなく、また、違約金の額が右条項を公序良俗違反により無効とするほど不当に高額なものともいえないから、被控訴人らの主張は理由がない。

3 抗弁3について

被控訴人らは、抗弁3に記載の事由を挙げて、控訴人が被控訴人小川鋳造に対し違約金一〇〇〇万円を請求することは権利の濫用であつて許されないと主張する。

しかし、被控訴人らの主張するように小川鋳造の違約事実が仮に軽微なものであつたとしても、小川鋳造は、東京梱包の注文する数量及びその指示する仕様に基づき、半自動梱包機を製造して、そのすべてを東京梱包に納入し、東京梱包以外の者には販売しないとの義務を控訴人に対して負つていた(原判決事実摘示第二、四、1)ものであるところ、小川鋳造は東京梱包の注文する数量を超えて本件梱包機を製造していたものであること前認定のとおりであり、この義務違反は控訴人の違約金請求を権利濫用として無効ならしめるほど軽微のものということはできないから、被控訴人らの主張は理由がない。

4 抗弁4について

被控訴人らは、控訴人と小川鋳造間の違約金条項は契約解除により昭和四七年八月末をもつて失効し、被控訴人小川鋳造の違約金支払義務もこれにより消滅した旨主張する。

しかしながら、原審証人瀬下順弘の証言によつてその成立を認め得る甲第二二号証に原審証人瀬下順弘の証言を綜合すると、小川鋳造は昭和四七年三月頃から同年七月頃までの間に、東京梱包の注文する数量以上の本件梱包機を製造したものであることが認められ、右製造期間は被控訴人らの主張する控訴人と小川鋳造間の契約解除時たる昭和四七年八月末以前であること明らかであるから被控訴人らの主張は理由がない。

5 そうすると、小川鋳造及び被控訴人小川一夫は連帯して、控訴人に対し、金一〇〇〇万円とこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和四八年九月七日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。

2 そこで進んで控訴人の被つた損害について検討する。

(一) 製造販売台数について

控訴人は、昭和四九年五月二二日、「小川鋳造、オガワ包装が、本件梱包機を昭和四七年九月一日以降昭和四九年五月二二日まですくなくとも約五〇〇台製造・販売していたこと並びに右製造・販売により一台につきすくなくとも金五万円の利益を得ていたこと」をその証すべき事実として、昭和四七年一月一日以降昭和四九年六月一四日までの製造日誌、販売日誌、機械台帳、売上台帳、納品伝票、物品発送簿、運送委託控、送り状、部品仕入台帳、部品仕入伝票、仕訳帳、当座勘定照合表、総勘定元帳、金銭出納簿、手形記入帳、手形振出控、棚卸資産受払台帳、部品受払台帳及び売買契約書について、これら文書の所持者たる小川鋳造及びオガワ包装に対して、特許法第一〇五条、商法第三五条及び民事訴訟法第三一二条第二号の規定に基づき文書提出命令を申立て、原審裁判所は、昭和四九年一二月二日(原審第九回口頭弁論期日)右申立に基づき右文書の提出を命じたが、小川鋳造及びオガワ包装は正当の事由なく右文書を提出しない。被控訴人ら訴訟代理人は、昭和五八年三月二二日付上申書において、文書不提出の理由として、昭和四九年八月一〇日オガワ包装等の取引先であつた第一電子工業株式会社が倒産し、このあおりでオガワ包装及び小川鋳造も昭和四九年九月一〇日取引停止処分を受けて倒産したところ、その際、大口債権者であつた中央エンジニアリング協業組合が債権保全並びに調査の目的でオガワ包装及び小川鋳造の関係帳簿等を引き上げて行つたが、昭和五〇年三月頃中央エンジニアリング協業組合も倒産するに至り、そのため、中央エンジニアリング協業組合の債権者が更にこれら関係帳簿等を持ち出したために、これらの帳簿の所在がつきとめられなくなつた旨述べているが、当審証人小林健作の証言によれば、オガワ包装及び小川鋳造の倒産、中央エンジニアリング協業組合の倒産の事実は認められるものの、中央エンジニアリング協業組合がオガワ包装及び小川鋳造の関係帳簿を引き上げたことはなく、また中央エンジニアリング協業組合の債権者がこれらの関係帳簿を持ち出したこともないことが明らかであるので、右上申書記載の文書不提出の理由は認めることができない。したがつて、民事訴訟法第三一六条に基づき、右文書に関する控訴人の主張を真実と認めることとする。

そうすると、被控訴人小川鋳造、同オガワ包装が昭和四七年九月一日以降昭和四九年五月二二日までの間に製造販売した本件梱包機の台数は五〇〇台と認められる。

(二) 損害の額について

小川鋳造と東京梱包との製造委託契約存続中に、小川鋳造及びオガワ包装が本件梱包機を製造販売することによつて得た利益は、本件梱包機一台につき金五万円であることは被控訴人らの認めるところであり、この事実に本件口頭弁論の全趣旨を総合すれば、小川鋳造と東京梱包との間の製造委託契約が終了した日の翌日である昭和四七年九月一日以降昭和四九年五月二二日までの間における小川鋳造、オガワ包装が得た利益もまた、本件梱包機一台につき金五万円を下らないと認めるのを相当とする。してみると、右金五万円に、小川鋳造及びオガワ包装が製造販売した製品の台数である前記認定の五〇〇台を乗じて算出した金二五〇〇万円が、小川鋳造及びオガワ包装の本件特許権ないし専用実施権侵害行為によつて控訴人が被つた損害の額と推定されることとなる。

被控訴人らは、特許権侵害によつて特許権者又は専用実施権者が被る損害額は実施料相当額であるとすべきであるところ、本件梱包機一台あたりの実施料相当額は金一万五〇〇〇円であると主張するが、特許法第一〇二条第一項による、特許権侵害者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額であるとの推定を覆えす事実の主張立証がない本件においては、控訴人の損害額を実施料相当額に限定すべき理由はない。被控訴人らの主張は理由がない。

3 右のとおりであるから、被控訴人らは連帯して、原告に対し、金二五〇〇万円とこれに対する不法行為の日の後であることが明らかな昭和五三年七月一八日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。

五 以上のとおりであるから、控訴人の小川鋳造及び小川一夫の各自に対する前記違約金一〇〇〇万円とこれに対する遅延損害金の支払を求める請求並びに控訴人の被控訴人らの各自に対する前記損害賠償金二五〇〇万円とこれに対する遅延損害金の支払を求める請求は、いずれも認容すべきであるから、原判決を主文一のとおり変更し(原判決主文一及び二の請求は、当審において取下げられた。)、被控訴人らの附帯控訴は理由がないからこれを棄却することとする。

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