大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和55年(ラ)1341号 決定 1980年12月25日

抗告人

和田久広

抗告人

和田久

抗告人

岩下光男

右三名代理人

井上章夫

相手方

遠藤秀喜代

主文

本件各抗告を却下する。

理由

本件抗告の趣旨は、原決定の取消を求めるにあり、その理由は、「原決定が本件建物に対する抗告人岩下光男の占有を認めなかつたのは重大な事実誤認であり、また同抗告人の占有を見過した執行はとりもなおさず間接占有者である抗告人和田久広、同和田久の権利を無視したものであり、その違法を是正することなく右抗告人両名の申立を却下した原決定は取り消されるべきものである。」というのである。

記録によれば、本件は、東京地方裁判所執行官が原決定記載の仮処分決定正本に基づき原決定記載の建物(本件建物)に対してなした仮処分の執行処分に対し、抗告人ら三名が原裁判所に対して執行異議を申し立てたところ、抗告人和田久広、同和田久の各申立を却下し、抗告人岩下光男の申立を棄却する旨の原決定がなされたため、抗告人らにおいて執行抗告に及んだものであることが明らかである。

判旨しかしながら、民事執行法のもとにおいては、民事執行の手続に関する裁判に対しては、特別の定めがない限り、執行抗告をすることができないものとされているところ(同法一〇条一項)、本件のように執行官のなした仮処分の執行処分に対する執行異議の申立を却下し又は棄却した裁判に対して執行抗告を認める旨の規定は存しないから、本件各抗告は不適法なものといわなければならない。

よつて、本件各抗告を却下することとし、主文のとおり決定する。

(杉田洋一 中村修三 松岡登)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例