東京高等裁判所 昭和55年(ラ)1436号 決定 1981年3月10日
抗告人
凸版印刷株式会社
右代表者代表取締役
鈴木和夫
右代理人
播磨源二
大久保誠太郎
主文
本件抗告を棄却する。
理由
抗告の趣旨及び理由は、別紙「執行抗告状」記載のとおりである。
そこで考えるに、民法三〇四条一項但書において、「先取特権者ハ其払渡又ハ引渡前ニ差押ヲ為スコトヲ要ス」としている趣旨は、先取特権者が差押によつて物上代位の対象となる債権を特定するとともに、物上代位権の存在を公示し、これにより取引の安全を図ることにあると解するのが相当であるから、債務者の破産の場合には、破産宣告前に債務者の右債権を差し押さえていなければ、先取特権者は破産管財人に対し、先取特権の物上代位による別除権を有することを主張することができないものというべきである。従つて、これと同旨の原決定は相当であり、右と異なる見解を前提とする抗告代理人の抗告理由は理由がなく、採用できない。その他には、本件記録を精査するも、原決定を取り消すべき理由を見出すことができない。
よつて、本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。
(鈴木重信 井田友吉 高山晨)