東京高等裁判所 昭和55年(ラ)381号 判決
本件抗告の理由は、「身勝手なのは抗告人らの父進であり、進の不行跡をこれと関係のない抗告人らの改氏を拒絶する理由とすることは不当である。現在の戸籍面でも進に婚姻外の子があることが明らかであるから、本件申立を許可しても特別戸籍面を複雑にするという程のことはない。まして勉は娘ではないからそれ程には思われない。同人の縁談に差障りがあるとすれば、現在も既にあるのである。感情の激化というが、それが向けられるべきは進に対してであり、全くのトバッチリというべきである。」というものである。
よって判断するに、子の氏の変更の許否については、子の福祉、利益を考慮して決すべきことはいうまでもないが、他方許可の審判により戸籍を同じくするに至る妻、嫡出子らの利害、意見等も全く無視することはできない。抗告人らは、進と氏を異にするため同人及び抗告人らの母国子との共同生活のうえにおいて、とりわけ入学、入園に際し不便であることを本件申立の理由とするのであるが、本件記録に徴すれば、原審認定どおりの事実を認めることができ、右事実関係によれば、進は、現在抗告人らの母国子及び抗告人らと共同生活をしてはいるが、進の妻美江との間に離婚調停事件、婚姻費用分担申立事件が東京家庭裁判所に係属していて婚姻関係はいまだ解消しておらず、右共同生活は法の期待に反する不安定なものというべく、それに進が抗告人らの親権者となっている訳でもないのであって、かかる状況下で抗告人らの氏を進の氏に変更することは必ずしも抗告人らの福祉、利益のため必要なものとは考えられず、しかも、抗告人らは、小学校、幼稚園生活において事実上進の氏を称することについて小学校、幼稚園の了解をえており、抗告人らにおいて現在さしせまって氏の変更をすることの必要性があるものとはいい難く、これに対し、進は、国子と情交関係を結び、その間に抗告人らをもうけ、前記のとおり同人らと共同生活をするに至っているところ、そのため進の妻美江、嫡出子らに対し長年にわたり心労を与え、少くとも昭和五二年頃以降は家族に対し遺棄同然の態度をとって省みず、美江は抗告人らの氏を変更することに強く反対しているのであり、また、進の嫡出子勉(次男)は現在独身であるところ、かって進の不行跡のためその嫡出子賢司(長男)の縁談が難航したことがあり、自らの縁談を考えると、これ以上戸籍面を複雑にしたくないという心情から同人も抗告人らの氏を変更することに反対しているのであって、これら反対には無理からぬものがあり、これを無視することはできない。
そうすると、抗告人らの本件子の氏の変更申立はいまだ許可するに相当でないものというべく、これを却下した原審判は相当であ(る)。
(小林 鈴木 河本)