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東京高等裁判所 昭和55年(ラ)593号 決定 1980年8月06日

抗告人

有限会社新日興

右代表者

岡樹延

主文

原決定を取り消す。

本件競落はこれを許さない。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は、別紙(抗告状写)記載の「申立の趣旨」及び「申立の原因」のとおりである。

抗告人は本件競売物件中宅地につき競落代金額を減額する裁判を求めているところ、そのような裁判を求めることは許されないが、本件抗告は結局競売法三二条二項民訴法六八〇条二項により競落許可決定に掲げた以外の条件で競落を許すべきことを主張して即時抗告をするものと解されるので、以下判断するに、本件記録に徴すれば、本件競売期日の公告において本件競売物件は「横浜市神奈川区斎藤分町七八番四宅地312.66平方メートル、同所七九番宅地362.31平方メートル、同所七九番地家屋番号三二四番三居宅木造瓦葺平家建床面積49.58平方メートル(現況床面積74.36平方メートル、附属建物木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建物置床面積9.91平方メートル)」と表示されており、右両土地の地積はいずれも登記簿上の地積と同じであり、その合計地積は674.97平方メートルであること、しかし抗告人の提出した訴外東神測量建設株式会社が右両土地につき作成した土地実測平面図によれば、右両土地の実測合計面積は一六七坪四一五(553.47平方メートル)であること、右記録によれば、本件競売物件の鑑定評価人は右両土地の面積が右表示どおりそれぞれ312.66平方メートル、362.31平方メートルであるとしてその評価額を算出し、これによつて最低競売価額が定められ、公告されていること、右両土地及び建物は一括競売されたことがそれぞれ認められるところ、右によれば、右両土地の実測面積は右公告における合計地積よりその約一八パーセントにあたる121.5平方メートル少く、右両土地の公告における合計地積と実測合計面積との間には著しく相異があるものというべく、したがつて、右公告は右両土地につき競売法二九条一項民訴法六五八条第一号の要件を具備するといえず、競売法三二条民訴法六八一条二項、六七二条第四号により本件抗告は理由があり、原決定は失当たるを免れない。

よつて、競売法三二条、民訴法六八二条、六七四条に従い、原決定を取り消し、本件競落はこれを許さないこととし、主文のとおり決定する。

(小林信次 鈴木弘 河本誠之)

競落許可決定に対する抗告の申立

右当事者間の横浜地方裁判所昭和五四年(ケ)第三八九号不動産任意競売申立事件は昭和五五年五月二三日競落許可せられた

申立の趣旨

一 本件競売物件中宅地部分は数量不足故実在面積相当額に減額せよ

との御決定を求める

申立の原因

一 競落人は競落許可決定が有つたので昭和五五年五月二五日所有者及川宅へ挨拶に行つたその際所有者及川正英は添付の別紙測量図面を見せ減少してると説明したので実に意外な事を知り驚愕した

二 所有者は自己所有の土地は登記簿上の坪数より約壱割五分も減少してる事実を承知しているのである

三 然るに競売に付され手続上の評価の為め鑑定のあつた時点でもその事実を告げず陰蔽し登記簿上の面積が有るかの如く信用させたのである

かかる行為は信義誠実に反すると言うべきであり実在面積が約壱割八分も減少したものを登記上の面積が有るとして何等の誠意も尽さず競売を進行させたその行為は許さるべきでない

四 552.45平方メートルの土地を674.97平方メートルとして売る事は不法も甚だしいと言う外ない

競落人が損失をうける事を意に介せざる行為は不実至極である

五 仮りに競落人は競売前に精査すべきであり競落人自身にその責任ありとする事はあまりにも酷な判断と言はざるを得ないその理由として競落許可以后ならば競落人の立場で色々と詳細なる調査も可能となるが競売期日前では他人の所有物に就いてテープを当てて正確な測量をする事は所有者のプライベートを侵害する行為であり許さるべきではないと信ずるが故に目測程度の事以上は到底できない

六 因つて本件競売物件については重大な瑕疵が有つたと言うべきであり

民法第五六三条一項同五六五条に該当するので申立趣旨の如き御決定を求める次第である

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