東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)141号 判決
審決を取消すべき事由の有無について判断する。
成立につき争いのない(中略)によれば、本願考案は、所定の厚さに切断した木板の左右両耳部を切断する機械の改良に関するものであつて、その特徴として、素材の芯出し作用と鋸の間隔調整作用を自動的に行うことにより耳部の切断作業が正確迅速に行われるようにするとともに、15粍設定リミツトスイツチによつて、材料を無駄なく有効に切断できるようにすることをその作用効果として期待していたことが理解できる。
したがつて、本願考案における15粍設定リミツトスイツチ27の構成とその作動態様は、本願考案の前記のごとき作用効果を達成するためには重要な事項といわなければならない。この点に関し、前掲各証拠には、「15粍設定リミツトスイツチ27が接する回転輪30は、第三図に示すように、周縁に一定の間隔を存して凹欠31が設けてあり、ラツク29の移動でピニオン32が回わると、スイツチ27の操作突子27´は一つの凹欠に入つて、木板の左右の縁より15粍入り込んだところで丸鋸8、9が止まり、その位置から真直に切断するものである。」(甲第五号証「明細書」三頁九行ないし一五行、甲第六号証「補正の内容」二頁二行ないし三行)との記載があり、かつ、作動態様に関しては、「幅調節流体シリンダー12の作動によつて位置決めストツパー23が動き、そして、ストツパー23と幅決めリミツトスイツチ20が離れた時点で、15粍設定リミツトスイツチに指令し、」(甲第五号証「明細書」四頁五行ないし八行)との記載のあることが認められるが、右記載及び第三図を参照しても、結局、15粍という一定した寸法がどのようにして設定されることになるのか明らかではない。15粍リミツトスイツチ27には幅決めリミツトスイツチ20からの指令が入るものと推測できるとしても、この指令によつてスイツチ27が作動を開始するとき、もともと操作突子27´がどの位置を占めているのかも不明であり、また、スイツチ27が接する回転輪30の周縁には、一定の間隔をおいて凹欠31が存在しているところからみて、一つの凹欠31と次の凹欠31との間隔は15粍の設定に役立つているのではないかと一応推測できるとしても、そのためには、ラツク29は、スイツチ27の作動開始までは、丸鋸8、9の附設された摺動機盤の動きと連動することなくまた凹欠31内にスイツチ27の操作突子27´が入り込んで動かないでいるが、スイツチ27に指令が入つてはじめて、一つの凹欠から次の凹欠までの間だけ、ラツク29の動きと丸鋸8、9が附設された摺動機盤の動きとが連動するものでなければならないが、この点の構成がどうなつているのかは明らかでなく、スイツチ27の操作突子27´がスイツチ27の作動開始時に必ず凹欠31内に存在していることが確保されるような構成に関する記述を明細書中に見い出すことはできない。
以上のとおり、15粍設定リミツトスイツチ27の構成及びその作動態様は、明瞭ではなく、この点で、明細書及び図面の記載は不備であつて、このため、本願考案の前記認定のごとき作用効果がどのようにして実現されるのか、理解できないものといわざるをえない。
したがつて、その余の点の判断を待つまでもなく、本願考案の明細書の考案の詳細な説明には、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、その考案の構成及び効果が記載されていないことになる。
そうすると、本願考案について、実用新案法第五条第三項及び第四項に規定する要件を満たしていないものとした審決の判断は正当であり、審決には原告主張のような違法はない。
よつて、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。
〔編註〕本件における実用新案登録請求の範囲は左のとおりである。
流体シリンダー4、5のピストン杆6、7に連けいし、材料送り込みテーブル1上に載せた木板aの左右両側を押えて芯出しする芯出しアーム2、2及び3、3を前記テーブル1と平行して水平に架設し、また、幅調節流体シリンダー12も水平に設け、そのピストン杆13を位置決めストツパー23に連絡させ、更に前記テーブル1の先に設けた一対の丸鋸8、9の間隔を調整するレバー10、11と、木板の左右両縁の各々の縁から15粍入り込んだ箇所で丸鋸8、9を止める15粍設定スイツチを装備した木板の両側耳部切断機。