大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)19号 判決

原告主張の審決取消事由の有無について検討する。

1 原告の1の主張について

審決が、本願発明と第一引用例のものとを対比するに当り、両者の相違点を看過したとの原告の主張は、(1)本願発明は、フオーミング材料であるのに対し、第一引用例のものは、ラべルであるとの点、(2)本願発明は、ラミネートシートであるのに対し、第一引用例のものは、ラミネートフイルムであるとの点を、審決がいずれも看過しているというのに帰着する。そこで、これらの点について順次検討する。

(一) 右の(1)の点について

当事者間に争いのない本願発明の要旨(特許請求の範囲)によると、本願発明は、ポリスチレン―ポリエチレンラミネートシートそのものであつて、そのための原材料、処理手段及び処理順序が特定されてはいるが、右ラミネートシートが、特にフオーミング材料としてのものである旨の限定はないことが明らかである。また、成立に争いのない甲第二号証によれば、本願発明の明細書の発明の詳細な説明中には、本願発明の実施例として、ポリスチレンシートにアルミニウムを蒸着させその上にポリエチレンフイルムをラミネートし、これをシートフオーミングにより弁当箱に成形する場合についての記載があるが、本願発明がこれに限定される趣旨の記載はないのみならず、その冒頭には、「本発明は、シートフオーミング材料等に用いられるポリスチレン―ポリエチレンラミネートシートに関するものである。」との記載があつて、この記載は、シートフオーミング材料として用いることがその一例であることを示しているものと解される(右記載についての原告の主張は首肯し難い。)。そして、本件の全証拠を検討しても、他に本願発明にかかるラミネートシートがフオーミング材料に限定されなければならない合理的理由は見当らない。

そうすると、本願発明にかかるポリスチレン―ポリエチレンラミネートシートは、フオーミング材料であることを限定的要件とすることはできないというべきであり、したがつて、原告のこの点についての主張は失当である。

(二) 右の(2)の点について

成立に争いのない甲第六号証、乙第一号証、第二号証によると高分子化学の技術分野において、長さ及び幅に比較して厚さが極めて薄い平板状の成形品をシート又はフイルムといい、一般にその厚さが〇・二ないし〇・二五ミリメートル以上のものをシート、それ未満のものをフイルムと称しているが、両者は、数値上明確な基準によつて厳密に区別された概念ではないことが認められる。

ところで、本願発明は、その発明の要旨によると、ポリスチレンシート又は同フイルムとポリエチレンシート又は同フイルムとのラミネートシートであるところ、前掲甲第二号証によると、本願発明の明細書には、フイルム及びシートをいかなる意味(特にその厚さの点)で用いるかについて特段の記述はなく、また、その目的物であるポリスチレン―ポリエチレンラミネートシートの厚さについて特段の限定があるものと解すべき記述もない。

他方、成立に争いのない甲第三号証によると、第一引用例のものは、裏面に蒸着被膜を形成したセロフアン等の表面フイルムと蒸着被膜を覆うようにラミネートされた熱可塑性合成樹脂製の補強フイルムとからなる「シート状体」のものであつて、厚さについては格別の限定も説明記載もないが、その蒸着被膜は、アルミニウム、錫、鉛等により形成されたものであり、また補強フイルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニルのような熱可塑性合成樹脂製の補強フイルムであつて、これらによつて十分な重量感を有し、ラベル、シール又は表示板のような用途に加工された場合、蒸着被膜の華麗さとともに改善された外観を呈するラベル用シート状体であることが認められる。そうすると第一引用例のものは、単に「シート状体」と表示されているにとどまらず、その厚さにおいて、前記のような通常の意味におけるシートとしての実体を備えたものか、少くともそのようなものを包含しているものであることは明らかである。

そうすると、原告の右(2)の点についての主張も失当である。

(三) 以上のとおりであるから、原告の1の主張は採用できない。

2 原告の2の主張について

原告は、本願発明は従来知られていなかつた新しいシートフオーミング材料としてのラミネートシートを供するものであり、そのため各引用例を総合しても得ることのできない顕著な作用効果を奏するものである旨主張する。

しかし、本願発明のラミネートシートが、フオーミング材料に限定されるべきものでないことは、1に詳述したとおりであるから、原告の2の主張もその前提において既に失当であり、採用することができない。

3 以上のとおり、原告主張の審決取消事由の1、2の主張はいずれも理由がなく、本願発明が第一引用例ないし第三引用例に記載の技術に基づいて容易に発明することができたとする審決の判断には誤りがない。

なお、原告は、本願発明に係るラミネートシート製弁当箱、食品皿等をその出願日以降今日まで継続して生産販売しているほか、その出願公開により、本願発明が公開されたにも拘らず、模倣品が出回るまでに、長年月を要した旨主張するが、たとえこのような事実があつたとしても、このことから直ちに前記の判断に誤りがあるとすることのできないことはいうまでもない。

よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

ポリスチレンシート又は同フイルムをそのままないし平滑処理してアルミニウムを真空蒸着し、得られるアルミニウム蒸着膜にポリエチレンシート又は同フイルムのままないしその平滑処理したものを、押圧接着せしめてなることを特長とするポリスチレン―ポリエチレンラミネートシート。

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