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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)286号 判決

事実及び理由

一  請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。

二  そこで、原告が主張する審決取消事由の存否について検討する。

1  第二引用例の認定について

成立に争いのない甲第四号証によれば、第二引用例は、ピユアパツクと名付けられたプラスチツクを塗被したミルク用の紙容器の製造、保管、使用方法について解説した雑誌、ザ・ミルク・デイーラー一九六二年六月号の記事及び写真であつて、その紹介されている紙容器すなわちミルクカートンは「補強用部分、フラツプ、切口部分で構成され、それらは熱せられ、一定の正確な順序で加工される。」(三四頁左欄一九行ないし二一行)と記載され、その三五頁に良好な見本、不完全な見本と題して写真が掲載されているのであるから、これらの記事が一例をあげて一定の構成を持つ容器の構造を開示しているものとして、同じくプラスチツクを塗被した紙等のミルク等容器である本件考案と対比させて推考難易の資料とすることに格別の不都合はなく、原告主張のような引用適格を欠くようないわれはない。そして掲載写真が複数サンプルを便宜的に解体して並べて撮影したものであるとしても、その解説記事からも明らかなように、それらの写真を通して、紹介するミルクカートンの機械加工の良・不良を説明するためのサンプルであり、良・不良の比較は、同種同形の構造を持つミルクカートンによらなければ理解の対象とはならず無意味であるから、当然同一構造に基づく同種同形のサンプルの写真とみるべきであり、その場合、比較の対象として、同じ部位を採用することも当然のことであつて、後述するように、写真中、右欄、中欄の上、中、下段の六枚の写真はミルクカートンの同じ部位に係るものといわねばならない。

ところで、成立に争いのない甲第三号証、乙第一号証及び弁論の全趣旨によれば、プラスチツクを塗被した紙容器の構造として、板状体の端を接合して形成された四角形の筒状体の下端に連接されたパネル状部を重ね合わせ、かつ、該パネル状部に隣接し、折目等によつて三角状に形成された部分を前記パネル状部を重ね合わせた部分の内側又は外側に重ね合わせて容器底部を形成することが本件考案出願前普通に知られていたことが認められ、このことを前提としてみると、第二引用例のミルクカートンは、四角柱状体(又は四角形の筒状体)の容器であつて、その端部は一対の主パネルと一対の三角形折り込みパネルから成つているものと認められ、又前記六枚の写真は、いずれも、ミルクカートンの四角柱状体の端部の部位に係るもので、中欄の上、中段の二枚と残りの四枚とは同じ部位に係るものではあつても、表裏を異にして撮影されたものと認められる。

そして第二引用例のものはミルクカートンとして液体を入れるものであるから、前記端部は水密にできていなければならず、エンボスの跡とみられるものから、上段中欄の写真には、容器の底部でフラツプを重ね合わせた外側(表側)と推認されるものが示されており(以下この写真を「外側写真」という。)、また上段右欄の写真には、その容器内側底部における三角形の補強部分の焼付部を引きはがした容器の右外側とみられる側の反対側に当る内側(裏側)と推認されるものが示されている(以下この写真を「内側写真」という。)ものと認められる。

そして外側写真においては、外側から重ね合わされたフラツプ(以下「底部外側フラツプ」という。)の右端が斜に切欠かれ(以下「外側切欠部」という。)、内側写真においては、筒状体底部を形成するために内側から重ね合わされたフラツプ(以下「底部内側フラツプ」という。)があり、その右側上方に、筒状体筒状側部を形成するための側部継手フラツプの延長部を接着した部分があり、その下方先端部が斜めに切欠かれており(以下「内側切欠部」という。)、そして外側切欠部と内側切欠部とが、底部内側フラツプを間に介在させて、対向し、相補・対応する関係になつていることが認められる。

なおまた、前記の外側写真と内側写真との対応、したがつてまた、底部内側フラツプと底部外側フラツプとの対置が、よしんば内外逆であつたとしても、従来、その何れの配置方法も普通に行われていたものでもあり、実質的に同一内容の相補・対応の関係が存在するというべきである。

弁論の全趣旨によつて成立の認められる甲第五号証も独自の見解に基いて作成されたものであるし、その内容自体も、右認定を左右するものではない。

2  進歩性の判断について

(一)  構成に関して

成立に争いのない甲第一号証の一・二、甲第三号証及び第一引用例の技術内容について原告があえて争つていないなど弁論の全趣旨によれば、第一引用例には審決認定のとおりの容器が記載されており、原告が本件考案の特徴を構成する要素(B)として主張する技術内容が存し、折り曲り部55、56(本件考案の折り返しパネル55、56に相当)が下の密封蓋39、41(本件考案の主パネル112、111に相当)と連接する辺の長さの和を折り込み蓋40(本件考案の折り込みパネル40に相当)の底辺の長さよりわずかに大きくしており、同様に折り曲り部60、61が細い横蓋38延長部(本件考案の延長部114に相当)及び下の密封蓋41(本件考案の主パネル112に相当)と連接する辺の長さの和を折り込み蓋42(本件考案のパネル42に相当)の辺の長さよりわずかに大きくしてあり、細い横蓋38延長部(本件考案の延長部114に相当)の端53と、ツメ50(本件考案の重ねフラツプ116に相当)の切込み52とが実質的に相補形状に対応していて、底22(本件考案の底部閉鎖部22に相当)完成時に互に整列する構成によつて密封性を保持するようにしていることが認められる。

そうして、前1項認定及び前掲甲第一号証の一・二によれば、第二引用例には、本件考案のように、加熱された時に活性化されて接着性になる熱塑性プラスチツク表面を有する板紙ないし同等物から形成された容器において、四角形の筒状体に形成するために接着した部分の端と反対側のフラツプの端をそれぞれ斜めに切欠いて相補形状として対応せしめ、また四角形の筒状体に形成するために接着した側のフラツプを、端を斜めに切欠いた部分との間に挿入して介在させることにより前記斜め切欠き部分を整列させることによつて密封性を保持するようにした構成が示されていることが認められる。

そうしてまた、前掲甲第三号証、第四号証及び弁論の全趣旨によれば、四角形の筒状体の底部を形成するために、筒状体を形成するための側部継手フラツプを接着した側のパネル(第一引用例における密封蓋39、本件考案におけるパネル111)と反対側のパネル(第一引用例における密封蓋41、本件考案におけるパネル112)との何れを上(外側)とし、下(内側)として挿入・介在させるかは、二つしかない選択の範囲内の事項であつて、当業者が適宜選択して実施することができる程度のものというべきである。

以上の各認定事実によれば、本件考案の構成は、第一引用例及び第二引用例に記載されたものに基づいて、きわめて容易に構成することができるものといわねばならない。

(二)  作用効果に関して

前記認定によれば、本件考案の構成は第一引用例及び第二引用例に記載されたものから、きわめて容易に構成することができるものであり、したがつてまた、その奏する作用効果も第一引用例、第二引用例から予想できる範囲内のものというほかなく、前掲甲第一号証の一・二、第三号証、第四号証を総合しても格別顕著なものということはできない。

三  以上のとおり、原告の主張はいずれも理由がなく、本件登録実用新案が第一引用例及び第二引用例に記載されたものから当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとした審決の判断に誤りはないから、これを理由としてその取消を求める原告の請求は失当として棄却する。

〔編註〕本件考案の要旨は左のとおりである。

加熱された時に活性化されて接着性になる熱塑性プラスチツク表面を有する板紙乃至同等物から形成された容器において、この容器は四つの側パネル34、35、36、37及びパネル37と一体でパネル34の内表面に接着された細い側部継手フラツプ38より成る断面方形の本体21、該本体の頂部にある頂部閉鎖部23、前記本体の底部にある底部閉鎖部22を有し、しかして前記底部閉鎖部22は、(a) 本体パネル34、36の下端に連接しそして底部閉鎖部の最も外側の層を形成する対置せる一対のパネル111、112、(b) 底辺28b、28dにおいて本体パネル35、37の下端に連接しそして最初に折り込まれて底部閉鎖部の最も内側の部分を形成する対置せる一対の三角形折り込みパネル40、42、(c) 前記主パネル111、112の折り込みパネル40との間にあつてこれらに連接しそして自由切断縁56a、55aを夫々有する一対の三角形折り返しパネル56、55、(d) 前記主パネル112と前記折り込みパネル42との間及び前記側部継手フラツプの延長部114と折り込みパネル42との間にあつてこれらに連接しそして自由切断縁61a、60aを夫々有する一対の三角形折り返しパネル61、60から構成されており、更に (イ) 前記側部継手フラツプの延長部114は端部に斜めの切欠き119を有しており、(ロ) 前記二対の折り返しパネル55、56、60、61は折り込みパネル40、42の折り込みと共に折り返されて該折り込みパネルと主パネル111、112との間に位置しており、(ハ) 前記パネル111は両側にテーパ部分118を有しそして他方の主パネル112と折り返しパネル55、61との間に挿入される折り込みフラツプ115を備えており、(ニ) 前記主パネル112は折り込みフラツプ115を覆つて位置せしめられそして前記側部継手フラツプ延長部の斜めの切欠き119と実質的に相補形状の斜めの切欠き120を有する重ねフラツプ116を備えており、これにより底部閉鎖部完成時に該切欠き120と前記側部継手フラツプ延長部の切欠き119の自由縁が折り込みフラツプ115を介在させて互に整列しており、更に(ホ) 前記折り返しパネル55、56の自由切断縁55a、56aがこの底部閉鎖部の折り込み及び封着に際して互に緊密に衝合するように、折り返しパネル55、56が主パネル112、111と連接する辺55b、56bの長さの和を折り込みパネル40の底辺28bの長さよりも僅かに大きくしており、同様に折り返しパネル60、61が延長部114及び主パネル112と連接する辺60b、61bの長さの和を折り込みパネル42の底辺28dの長さよりも僅かに大きくしてあることを特徴とする容器。

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