大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)307号 判決

一 原告の請求の原因及び主張のうち、一ないし三の事実は当事者間に争いがない。

そこで、審決にこれを取消すべき違法の点があるかどうかについて考える。

二 原告は、甲第六号証を引用し、引用例(成立について争いのない甲第五号証)におけるストローベルト5の右端部とハウジング1の右端部の間は選別部の一部であるから、審決が「ストローベルト5の右端部」を「脱穀装置の排稈口」であると認定したのは誤つている旨主張する。

しかしながら、藁をコンベアー形式のストローベルトで移送する点がたまたま同一であるというだけで、甲第六号証を根拠に引用例のものもストローベルト5の右端部は選別部の一部であるということはできない――引用例の図面によればストローベルト5の右端部は脱穀装置の排稈口であると認められる――のみならず、仮にストローベルト5の右端部で原告のいう選別が行なわれるとしても、それは収穫機内部の主たる穀粒選別機構での選別を免かれ、排藁に混在している極くわずかな穀粒を排藁作業の直前で回収しようとするにすぎないものと認められるから、右ストローベルト5の右端部を「脱穀装置の排稈部」であるといつて差支えない。

原告の主張は理由がない。

三 原告は、引用例の回転供給装置35は、排藁を排稈口からカツターに移送するものではなく、カツター自体の構成要素であり、本願考案の排藁搬送装置に相当するものではないから、審決が引用例の回転供給装置は本願考案の排藁搬送装置に相当するとしたのは認定を誤つている旨主張する。

原告の右主張は、審決が引用例における回転供給装置はロータリーフイーダー35であるとし、これが本願考案の排藁搬送装置に相当すると認定したことを前提とするものであるが、審決はそのようには認定していない。

引用例第一図の記載によれば、被告主張のごとく、審決が本願考案の「排藁搬送装置」に相当するとする引用例の「回転供給装置」はロータリーフイーダー35とテーブル6より成るものであると認められる。

原告は、引用例におけるロータリーフイーダー35はカツター自体の構成要素であり、また、テーブル6は固定刃であるカツターバー17を取付けるための機枠であるから、これらは回転力を利用したことを特徴とする回転供給装置ではないとの趣旨を主張するが、テーブル6が固定刃であるカツターバー17を取付けるための機枠の役をしているものとしても、テーブル6とロータリーフイーダー35とが協働して、ストローベルト5から供給される排藁をカツターに送り込むものであることは引用例の記載から明らかであるから、原告の主張は理由がない。

四 原告は、審決が引用例の回転切断装置は本願考案のカツターに相当するとしたのは誤りであるとし、引用例における回転切断装置11単体では所期の切断作用が得られないから固定刃17を設け、且つ供給部に設けたロータリーフイーダー35等の助けを借りて切断するものであり、単体では所期の切断作用を得ることができない回転切断装置11を本願考案のカツターに相当するものとすることはできないとの趣旨を主張する。

しかしながら、本願考案はカツターの形状形式について何らの限定もしていないから、引用例における回転切断装置が本願考案のカツターと異なるとの主張をすることはできないものといわなければならない。

五 原告は、引用例におけるハウジング及び後壁は本願考案のカバーに相当するとした審決の認定は誤つている旨主張する。

しかしながら、本願考案におけるカバーは、「排稈口の上方から排藁搬送装置の上方を経てカツターの供給部に臨む部位」を被覆するものであると認められる(本願考案の実用新案登録請求の範囲の項――甲第三号証の三――参照)ところ、引用例のハウジング1及び後壁3は、ストローベルト5の排稈口の上方から、ロータリーフイーダー35及びテーブル6から成る排藁搬送装置の上方を経て、カツターバー17と回転切断機11の直前部――テーブル6が凹面7へと垂下しはじめる部分――であるカツターの供給部に臨む部位を被覆しているから、引用例におけるハウジング及び後壁は本願考案のカバーに相当するとした審決の認定に誤りはない。原告は、引用例には藁切機及び散布機は「後方へ突出したハウジング1を含む収穫機に取付けられるようになつている」と記載されており、且つストローベルト5の後端部には排稈口など存在しないから、ハウジング1は本願考案のカバーの一部に相当するものではない旨主張する。

しかしながら、引用例の図面によれば、ストローベルト5の後端部は脱穀を終了した藁を排出する排稈口であることは明らかであり、ハウジング1はその上方を被覆していることも明瞭であるから、原告の右主張は理由がない。

原告は、また、引用例の後壁3はカツターの構成要素である覆い2の一部であり、覆い2内を通つて開口端4から出て行く材料を偏向させるためのものであるから、後壁3は本願考案のカバーには相当しない旨主張する。

しかし、覆い2の存在がカツターの切断作用を助長するとしても、覆い2がカツターの構成要素であるものとすることはできず、また、後壁3は開口端4から出て行く材料を偏向させるためのものであるからといつて、そのために後壁3が排藁搬送装置の上方を経てカツターの供給部に臨む部位を被覆していないものであるということはできないから、原告の主張は理由がない。

六 以上のとおりであり、本願考案は引用例と同一であるとした審決の認定に誤りはないから、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を棄却する。

〔編註その一〕 本願考案に関する事項は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

原告は、昭和四四年一一月一九日名称を「カツターの被截断物供給装置」とする考案(以下「本願考案」という。)につき実用新案登録出願をしたところ、昭和五〇年一月二〇日拒絶査定を受けたので、同年三月三一日審判を請求し、右事件は特許庁昭和五〇年審判第二六五三号事件として審理されたが、昭和五五年九月三日「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は同月一三日原告に送達された。

二 本願考案の要旨

脱穀装置の排稈口の排出側に、カツターの供給部を臨ませて装着すると共に前記排稈口と供給部との間に排藁を排稈口からカツターに移送する排藁搬送装置を介装し、前記排稈口の上方から排藁搬送装置の上方を経てカツターの供給部に臨む部位をカバーで被覆したことを特徴とするカツターの被截断物供給装置。

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙第一図面

<省略>

別紙第二図面

<省略>

<省略>

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