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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)39号 判決

事実及び理由

一  請求原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。そこで、原告主張の審決取消事由の存否について判断する。

二  本件考案の要旨、引用例の記載内容が審決認定のとおりであること、本件考案と引用例との対比において、審決認定の相違点が存するにすぎないことは、当事者間に争いがない。

成立に争いのない甲第二号証(本件考案の実用新案公報)によれば、本件考案は、道路に設置する排水溝用ブロツクに関するものであり、雨水等が流入しなくなるなど、排水が適切に行われないことがしばしばある別紙図面第3図及び第4図に示すような従来の排水溝の欠点を解決することを目的としたものであることが認められる。

(原告主張の1の点について)

前掲甲第二号証及び弁論の全趣旨によれば、道路側溝類の施工現場において、側溝形成のために、U形コンクリートブロツクを連続接続して構成するか、現場打ちコンクリート施工によつて連続したU形側溝を構成するかは、適宜選択して施工されている周知の事柄であるということができる。そうであれば、引用例に記載されている現場打ちコンクリート施工により構成された連続した排水溝に代えて、これをブロツク化し、ブロツクを連続接続して排水溝を構成するようなことは、当業者がきわめて容易に考案をすることができる程度のことというべきである。

原告は、U形コンクリートブロツクが周知であるからといつて、それとは生産技術において顕著に相違する本件考案が引用例のものに基づいてきわめて容易に考案をすることができるとはいえない、と主張する。

しかしながら、仮に、周知のU形コンクリートブロツクと本件考案のブロツクとの製法が異なり、本件考案のブロツクの製法においては特殊な製作手段が必要であるとしても、それは、物品の形状、構造又は組合せに係る実用新案とは関係のない、ブロツクの製法上の困難性の問題であつて、現場打ちコンクリート施工により構成された公知の連続した排水溝に代えて、これをブロツク化し、また、このブロツクを連続接続して排水溝とすることに想到することが容易であるとの判断に影響を及ぼすものではない。原告の右主張は採用することができない。

(原告主張の2の点について)

前述したところから明らかなように、現場打ちコンクリート施工による連続したU形排水溝の形成が、現場の状況等により困難な場合に、これに代えて、U形コンクリートブロツクを連続接続してU形排水溝を形成することは、普通に行われているところである。右の場合の困難性の解消は、U形排水溝の形成にブロツクを用いたことによる効果といえる。引用例においては、原告の主張するゴムチユーブを用いるという特殊な技術が不可欠であつて、これに伴う困難があるとしても、これを本件考案のようにブロツク化することにより、前記の特殊の技術を用いることに伴う困難性を解消することができるという効果は、要するに、ブロツクを用いたことによる効果であつて、現場打ちコンクリート施工による連続したU形排水溝に代えて、U形コンクリートブロツクを連続接続してU形排水溝を形成する場合に得られる効果と結局において変らないということができる。この点に関する審決の判断に誤りはない。

三  右のとおりである以上、本件考案は、引用例に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができた、とした審決の判断に誤りはない。

よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註そのI〕本件における考案の要旨および審決理由の要点は左のとおりである。

本件考案の要旨

両側4より中央に向つて低くなるように傾斜した上面部1と、その上面部1の中央部分に設けられた連結溝2と、連結溝2に連らなる排水部3とからなる排水溝用ブロツク。(別紙図面第1図及び第2図参照)

本件審決の理由の要点

本件考案の要旨及び実用新案登録出願、出願公告、設定登録の各日は、前各項記載のとおりである。

これに対し、本件考案の出願前に日本国内において頒布された刊行物である重化学工業通信社昭和四五年八月一日発行「コンストラクション」第八巻第八号第七八頁ないし第八四頁(以下、「引用例」という。)には、「両側より中央に向つて低くなるように傾斜した上面部と、この上面部の中央部分に設けられた溝と、この溝に連通する通水部(円型)とを備え、高速道路の排水溝として現場打ちコンクリートにより連続して形成される水路。」が記載されている。

本件考案(コンクリート製とした場合のもの)と引用例のものとを対比すると、両者は、引用例のものが現場打ちコンクリートにより連続して形成される水路(排水溝)であるのに対し、本件考案が接続して排水溝を形成するブロツクである点で相違しているにすぎない。

そこで、右相違点を検討するに、ブロツク(例えば、U形コンクリートブロツク)を接続して道路側溝類を構成することは従来周知であり、しかも、本件考案がブロツクであることの効果は、この周知例がブロツクを用いている効果と同じであるから、この相違点にいわゆる進歩性はない。

したがつて、本件考案は、引用例のものに基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第三条第二項の規定に違反して実用新案登録されたものであり、同法第三七条第一項第一号の規定により、その登録を無効とすべきものである。

〔編註その二〕本件に関する図面は左のとおりである。

第1図

<省略>

第2図

<省略>

第3図

<省略>

第4図

<省略>

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