東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)4号 判決
審決の取消事由の有無について検討する。
成立に争いのない甲第一号証、第四号証及び弁論の全趣旨によると、引用意匠は、古沢譲二が意匠登録出願をしたものであるところ、同人は、右意匠の創作をした者ではなく、また、右意匠について意匠登録を受ける権利を承継している者でもないのに、原告会社に勤務していた際に知り得た同会社の権利に係る同意匠について、退社後に、自己のため勝手に意匠登録出願をしたものであることが認められ、この認定に反する証拠はない。
そうすると、引用意匠の右意匠登録出願は、本願甲意匠及び本願乙意匠との先後願関係については、意匠法第九条第四項の規定により、意匠登録出願でないものとみなされるから、本願甲意匠及び本願乙意匠について引用意匠についての意匠登録出願の存することを理由として、いずれも同条第一項の規定により意匠登録を受けることができないとした本件各審決は、違法として取消を免れない。
よつて、本件各審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求をいずれも正当として認容することとする。
〔編註〕本件における審決取消事由は左のとおりである。
1 前項1の審判事件の審決について
原告は、本願甲意匠について前記拒絶理由の通知に接する直前の昭和五三年五月八日に、前記本意匠の登録出願について、先願の関係にある引用意匠に類似する旨の拒絶理由の通知を受けたので、直ちに調査したところ、引用意匠は、訴外古沢譲二がその意匠につき創作者でもなく、また、意匠登録を受ける権利を承継している者でもないのに、意匠登録出願をしたいわゆる冒認による意匠登録出願に係るものであることが判明した。そこで、原告は、同人に質したが、同人が当初右冒認の事実をたやすく認めようとしなかつたため、本願甲意匠に係る審判事件についても、引用意匠の出願について争うべく準備し、昭和五三年七月二五日付書面で、その旨を明らかにし、意見書提出期間の猶予等を求める一方、引き続き同人についてきゆう明したところ、同人も冒認の事実を認め、ようやく昭和五四年一二月二一日付で、右冒認の事実を認める旨の証明書(甲第一号証)を入手しうるにいたつた。ところが、その僅か前である同年一二月一二日、前記のとおり、本件審決の謄本の送達を受けたのである。
以上のとおり、引用意匠は、訴外古沢譲二の冒認による意匠登録出願に係るものであるから、本願甲意匠との先後願関係については、意匠登録出願でないものとみなされ、したがつて、意匠法第九条第一項の規定を適用して、本願甲意匠の意匠登録出願を拒絶した審決は、違法として取消されるべきものである。
2 同2の審判事件の審決について
右1のうち「本願甲意匠」を「本願乙意匠」とするほか同一。