東京高等裁判所 昭和55年(行コ)36号 判決 1981年5月27日
控訴人
株式会社明輝製作所
右代表者
黒柳勝太郎
右訴訟代理人
成富安信
外二名
被控訴人
中央労働委員会
右代表者会長
平田冨太郎
右指定代理人
馬場啓之助
外四名
被控訴人補助参加人
総評全国一般労働組合神奈川地方本部
右代表者
三瀬勝司
右訴訟代理人
野村正勝
主文
1 原判決を取り消す(但し被控訴人が中労委昭和五二年(不再)第九号事件について同年一〇月一九日付けをもつてした命令中、神労委昭和五一年(不)第二八号不当労働行為申立事件の主文1及び2項を維持した部分の取消を求める訴は取り下げられた。)。
2 控訴人の訴を却下する。
3 訴訟費用(参加費用を含む。)は、第一、二審を通じて控訴人の負担とする。
事実《省略》
理由
一請求の原因一の事実は当事者間に争いがない。
二控訴人は、被控訴人が初審命令主文第3項を維持して控訴人の再審査申立を棄却した限度において、本件命令の取消を求めるのであるが、初審命令主文第3項は、控訴人に対して同命令交付後一週間以内に、同項に定める謝罪文を同項の定めるところに従つて一四日間掲示すべき旨を命じているのであり、しかも、初審命令書の写が昭和五二年一月二七日に控訴人に交付されたことは、<証拠>によつて、これを認めるに十分であり、また控訴人が該期間満了前である同年二月九日に再審査の申立をしたことは当事者間に争いがないが、労組法二七条四項及び五項によれば、初審命令はその写が当事者に交付された日から効力を生じ、かつ再審査の申立は初審命令の効力を停止しないのであるから、<証拠>によつて、被控訴人が本件の控訴人の再審査申立につき審問の手続を終結した日であることが明らかな昭和五二年八月二九日には、初審命令主文第3項は、すでに同項所定の謝罪文掲示期間が満了していたことは明らかである。してみると、前記のように初審命令のすべてを維持し、控訴人の本件再審査申立を棄却した本件命令のうち、初審命令の主文第3項をそのまま維持した部分は、必ずしも当を得たものとは言いがたいけれども、もはや右第3項による掲示義務の履行が期間経過により不能であり、かつ、他に控訴人が本件命令の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有すると解すべき事情は認められない以上、右第3項又は本件命令のうちこれを維持した部分の当否を云々することは法律上無意味であつて本訴は訴の利益を欠き、不適法といわざるをえない。
三以上のとおりであつて、本件訴は不適法として却下を免れないところ、これと趣旨を異にする原判決を右のとおり変更することとし、訴訟費用(参加によつて生じた費用を含む。)の負担につき行訴法七条、民訴法九六条、八九条、九四条を適用して主文のとおり判決する。
(石川義夫 寺澤光子 原島克己)