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東京高等裁判所 昭和55年(行コ)41号 判決 1981年7月15日

東京都新宿区左門町二番地二

控訴人

長谷川吉雄

右訴訟代理人弁護士

堀川多門

東京都新宿区三栄町二四番地

被控訴人

四谷税務署長

榊成美

右指定代理人

櫻井登美雄

佐々木正男

三好毅

小澤邦重

右当事者間の所得税更正処分等取消請求控訴事件につき、当裁判所は、昭和五六年六月一日終結した口頭弁論に基いて、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人が昭和五〇年三月一二日付けでした、控訴人の昭和四八年分所得税の更正及び過少申告加算税賦課決定(但し、昭和五〇年八月九日異議決定により一部取り消されたもの)を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」旨の判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張並びに証拠の提出、援用及び認否は次のとおり加えるほか、原判決の事実摘示(原判決二枚目―記録一七丁―表五行目から原判決一一枚目―記録二六丁―表一行目まで。原判決添付表一ないし四を含む。)と同一である(但し、原判決五枚目―記録二〇丁―表二行目に「家貸収入」とあるのを「家賃収入」と、原判決一〇枚目―記録二五丁―表八行目に「(7)汁器備品」とあるのを「(7)什器備品」と改め、原判決一〇枚目―記録二五丁―裏一〇行目「第一〇号証」とあるあとに「、但し、第九号証は写しを原本に代えて提出。」を加える。)から、これを引用する。

一  被控訴人代理人は、次のとおり述べた。

さきに引用した請求原因に対する被控訴人の主張のうち冒頭部分(原判決三枚目表末行から原判決四枚目―記録一九丁―表一行目まで)を次のように補う。

「控訴人の昭和四八年分の総所得金額及び分離長期譲渡所得金額に対する算出税額並びに本件更正による所得金額の算出税額の計算過程は次のとおりである(なおこの計算においては、昭和四九年法律第一五号による改正前の所得税法―以下「旧所得税法」という。―及び同年法律第一七号による改正前の租税特別措置法―以下「旧措置法」という。―の規定を適用した。)

1  総所得金額に対する算出税額の計算

(1)  課税総所得金額 一三二三万二〇〇〇円

13,550,500円(総所得金額)-318,352円(所得控除額)=13,232,OOO円

(2)  算出税額 四九九万三六〇〇円

旧所得税法八九条の規定により、右課税総所得金額を別表のとおり課税総所得金額に区分し、その金額に別表の税率を乗じて算出したも である。

2  分離長期譲渡所得金額に対する算出税額の計算

(1)  課税分離長期譲渡所得金額 八七三万九〇〇〇円

(2)  算出税額 一三一万〇八五〇円

旧措置法三一条一項の規定により、右課税分離長期譲渡所得金額に一〇〇分の一五の税率を適用して次のとおり算出した。

<省略>

本件更正による所得金額(異議決定により一部取り消された後のもの)に対する算出税額の計算

(1)  総所得金額に対する算出税額

(一) 課税総所得金額 八三三万九〇〇〇円

8,657,561円(総所得金額)-318,352円(所得控除額)=8,339,OOO円

(二) 算出税額 二五一万一九四〇円

前記一2と同様の方法により算出したものであるが、簡略化して、次のとおり右課税総所得金額のうち、七〇〇万円に対する算出税額(別表1から12までの算出額)一八九万六〇〇〇円と、右八三三万九〇〇〇円から、七〇〇万円を差引いた後の一三三万九〇〇〇円に対する別表13の税率(一〇〇分の四六)を乗じて算出された六一万五九四〇円とを合算した税額である。

(2)  分離長期譲渡所得金額に対する算出税額

(一) 課税分離長期譲渡所得金額 一一八九万五〇〇〇円

(二) 算出額 一七八万四二五〇円

前記二と同様の方法により次のとおり算出したものである。

<省略>

二 控訴代理人は一の被控訴人主張事実を争うと述べた。

三 証拠として、控訴代理人は、当審における控訴人本人の供述を援用し、乙第一一号証の一、二の原本の存在、成立を認め、第一二号証の成立を認め、被控訴代理人は乙第一一号証の一、二(いずれも原本に代えて写)、第一二号証を提出した。

理由

一  当裁判所は、控訴人の請求を失当として棄却すべきであるとするものであって、その事実認定及びこれに伴う判断は、次のとおり加えるほか、原判決理由説示(原判決一二枚目―記録二七丁―表二行目から原判決一九枚目―記録三四丁―裏一〇行目「棄却する」まで。)と同一であるからこれを引用する(但し、原判決一九枚目―記録三四丁―裏一〇行目に「理由がない」とあるのを「失当である」と改める。)

1  原判決一八枚目―記録三三丁―表一一行目「甲第二号証及び」の次に「原本の存在、成立に争いのない乙第一二号証の一、二並びに原審」を加える。

2  控訴人の昭和四八年分の総所得金額及び分離長期譲渡所得金額に対する算出税額並びに本件更正による所得金額の算出税額が、被控訴人主張のとおり(但し、別表中番号9欄の税率「一〇〇分の三二」とあるのは「一〇〇分の三〇」の明らかな誤記であると認める)であることは、旧所得税法、旧措置法の各該当規定に照らし計数上明らかである。

3  当審における控訴人本人の供述中には「控訴人が個人で営業していた不動産業の営業上の資産及び負債は、昭和四八年一月一日に、有限会社長谷川不動産に譲渡、同会社において承継し、昭和四八年に入って控訴人個人が、不動産業として、不動産を処分した事実はない。控訴人が昭和四八年分の確定申告において、控訴人が有限会社長谷川不動産に不動産の売却を依頼し、その仲介手数料を支払ったとの申告をしているが、右は、当時控訴人が連帯保証人となっていた株式会社百万電気が倒産し、気が転倒していたし、申告期限も迫っていたので深く考えないで記載したものである。」旨の供述部分がある。しかし、右供述部分のとおりであるとするならば、売却された不動産が、控訴人個人の営業用資産であるはずがなく、そのことは控訴人にとっては極めて重要かつ明確な事実であるから、右供述のような事情があったとしても、申告に際しこれを誤ったともたやすく認め難い。しかも、手数料を支払った事実が全くなかったとするならば、誤ってこれを支払った旨記載するということも容易に首肯し難い。同供述のその余の前認定に反する部分は、先に引用した原判決認定の事実及びその認定に用いられた各証拠を対比しても右供述部分を採用し難いので、当審における控訴人本人の前記供述部分は採用することができない。

二  よって、原判決は、相当であって、本件控訴は理由がないから、民訴法三八四条に従いこれを棄却すべく、控訴費用の負担につき、行政事件訴訟法七条民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 園部秀信 裁判官 村岡二郎 裁判官 川上正俊)

別表

<省略>

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