大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和56年(う)862号 判決

被告人 芳賀英明

〔抄 録〕

所論は、判例のいうわいせつの定義は抽象的にすぎるため、小売店が仕入れ・販売等の業務を行うに際しての具体的基準にはなりえず、従って小売店自身が刑法一七五条に該当する図画かどうかについて的確な判断をすることは困難であり、小売店としては検挙・処罰の危険を避けて安全に商売を営むためには、自主検閲をし、本来その流通が憲法上許されているものについてまで販売を差し控えるようになるから、結局右は憲法二一条の検閲に当り、同条に違反する、と主張する。

ところで、もともと憲法が禁止する検閲とは、公権力が外に発表されるべき図画、文書等の思想内容をあらかじめ審査し、不適当と認めるときは、その発表を禁止する措置を指すのであるから、小売店の判断と責任で行われた販売・所持等の行為の後に、わいせつ物の販売・所持罪としてこれを検挙・処罰することは憲法の規定する事前検閲禁止に反することではない。

また、刑法一七五条に当るものについては、それが思想の表明であるとしても、その伝播を憲法が保障しているものではない。しかも、本件写真誌の場合、一見して刑法にいうわいせつ図画に当ることが明らかなものであるから、その販売をした小売店の責仕者を刑法一七五条に問擬したとしても、憲法上流通の保障されている図画の流通一般を禁圧する効果の生ずるものではない。従って憲法二一条に反する旨の論旨は採用の限りではない。

(小松 時国 苦田)

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