大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(ネ)1171号 判決

債権的請求については別として、およそ所有権その他の物権に基づいてその妨害排除のために特定の物件の撤去を求めるには、その物件について処分権を有する者に対して行うべきである。なんとなれば、仮りにその他の者を被告とし物件撤去の請求をなし、勝訴の確定判決を得たとしても、所有者その他撤去を妨げる権利を有する者から第三者異議の訴が出されたときは、結局撤去の目的を果さないのに対し、所有者その他の処分権者(本件設備等の撤去は一の事実上の処分である。)を被告として撤去の請求をなし、勝訴の確定判決を得た場合に、その物件についてその他の者(たとえば物件を設置したに過きない者)が第三者異議の訴によって右判決の執行を妨げることはできないからである。それ故訴訟上物権的請求としてある物件の撤去を求めるに当り、所有者その他当該物件について処分権限を有する者以外の者(共有者も個々的には共有物処分の権限を有しない。民法第二五一条)を被告とした訴は当事者適格をあやまった不適法な訴というべきである。

さて本件についてみるのに、本件撤去の請求は所有権に基づくそれであるところ、弁論の全趣旨及び当審検証の結果によれば、本件設備は、控訴人主張の区分所有建物たる本件ビルの躯体の一部をなす本件壁に高さ巾とも約一五〇センチメートルの出窓風の飾り物二箇を鉄板及び鉄格子をもって恒久的に固定したものであることが認められ、区分所有建物の躯体たる壁は共用部分に属すると解すべきであるから、本件設備は本件ビルの共用部分に附合し、その所有権は本件ビルの区分所有者全員の共有に帰したものというべきである。そうして被控訴人らが本件建物の区分所有者全員の共有物たる本件設備等に対して、その撤去という事実上の処分をする権限を有すると解すべき根拠は本件においてまったく見当らない。すなわち、本件弁論の全趣旨によれば被控訴人組合の現行規約は、甲第九号証に掲げられたブロードウェイ管理組合規程案のとおりであることが認められ、これによれば被控訴人組合の目的は「ブロードウェイの敷地及び建物の共用部分の管理並びに使用について必要な業務及び協議を行うこと」に限られ、右業務としては「共用部分の保守、管理」「その他敷地建物の管理に必要な一切の業務」が予定されているのであるが、本件設備等の撤去はむしろ共用部分の変更にあたるというべく、その保守、管理の域を超えていると考えられるので、規約によって右設備等撤去の権限をその共有者である被控訴人組合員らが、被控訴人組合もしくはその代表者に一任していると解することは到底できないし、被控訴人組合代表者が建物の区分所有に関する法律第一八条によって当然に右の権限を有すると解することもできない。さらに被控訴人竹内、同市川は本件弁論の全趣旨によればそれぞれ本件ビルの区分所有者の一員であることが認められるが、同じく弁論の全趣旨によって他に多数の区分所有者が存在していることが認められるから、これまた個々的には本件設備の変更にあたる撤去の権限を有しないことが明らかである。

それ故控訴人の右設備等撤去の訴は、当事者適格を誤った不適法なものであるから却下を免れない。なお、このように解するときは、控訴人が本件設備等の撤去を請求するには、本件ビルの区分所有者全員(控訴人を除く。)を相手にしなければならないこととなり、煩瑣にたえないかも知れないが、さりとて逆に本件訴訟における被控訴人組合の被告適格を是認した場合、控訴人被控訴人間の本案判決が区分所有者全員に対して拘束力が及ぶと解すべき根拠がない以上、右本案判決確定後に区分所有者から第三者異議の訴が出た場合、右判決の執行が不能になること前述のとおりで、より一層煩瑣な事態を招くことになるから、区分所有者全員を被告とすることの煩瑣は、被控訴人組合の被告適格を認めることの理由とはなりえないのである。

(石川 寺澤 寒竹)

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