東京高等裁判所 昭和56年(ネ)1918号 判決 1981年12月23日
控訴人 甲山太郎こと 甲野太郎
被控訴人 小粥康光
右訴訟代理人弁護士 佐藤恒男
主文
原判決を取消す。
本件を千葉地方裁判所に差戻す。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人(民訴法三七八条、一三八条により控訴状擬制陳述)
(本案前の申立)
主文と同旨の判決
(本案の申立)
1 原判決を取消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
との判決
二 被控訴人
控訴棄却の判決
第二当事者の主張
次のとおり附加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
控訴人
1 本案前の主張
本件訴状の送達手続は不適法であって、控訴人は、昭和五六年七月三日原判決正本の送達を受けて、はじめて本訴提起の事実を知ったものである。
2 請求の原因事実に対する認否
全部否認する。
理由
一 原審は、昭和五五年一一月一八日に本件の第一回口頭弁論期日を昭和五五年一二月一八日午前一〇時三〇分と指定し、右期日においては、控訴人不出頭のまま被控訴人に訴状を陳述させたうえ直ちに口頭弁論を終結して判決言渡期日を昭和五六年一月二九日午後一時と指定し、同期日に当事者双方不出頭のまま原判決を言渡したこと、以上の事実は、本件記録によって明らかである。
二 控訴人は、本件訴状の送達手続の不適法を主張するので、この点について検討して見ると、本件記録中の昭和五五年一月一九日付千葉中央郵便局、配達担当者八田昭子作成の郵便送達報告書によれば、本件の訴状副本、答弁書催告状、前記第一回口頭弁論期日の呼出状及び《証拠省略》は、昭和五五年一一月一九日一一時四五分前記控訴人の肩書住所において、同居者が正当の理由なくして右の送達書類の受領を拒んだため、これをその場に差置いた旨の記載があるが、右同居者の氏名の記載を欠くため、同居者とされている者が一体誰であったのかを右送達報告書自体によって確定することができないし、本件記録を具さに検討して見ても、それが昭和五五年一一月二二日に控訴人と離婚した乙山花子ではなかったかと推測しうる余地はあるにしても、そうだと断定しうる資料は存在しない。そうして右送達報告書以外に本件訴状が控訴人に送達されたことを確認することのできる資料は見当らず、また被控訴人において、本件訴状が控訴人に対し有効に送達されたことを立証する手段を持たないものであることは、当審における口頭弁論の全趣旨に照らして明らかである。
三 以上によれば、原判決は、本件訴状が控訴人に対し有効に送達されたことの確認がなされていないのにかかわらず、これを看過して言渡されたことになるのであって、その手続が法律に違背するものであることは他言を要しないし、右の手続上の瑕疵が当審において治ゆされる見込がないことは、前記認定事実によって明らかである。
四 よって、民訴法三八七条、三八九条の規定に則り、原判決を取消し、本件を原審に差戻すこととし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 石川義夫 裁判官 寺沢光子 原島克己)