大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(ネ)597号 判決

控訴人らは本件(五)土地の財産分与が詐害行為であると主張するので検討する。

離婚に伴う財産分与は、離婚によって蒙る損害賠償、婚姻中の夫婦共有財産の清算、及び離婚後の扶養を目的とした制度であって、それは、離婚という身分行為に伴う法律上の義務の履行と目すべきものであるから、原則として詐害行為とはならないというべきであり、ただ、財産分与が民法七六八条三項の規定の趣旨に照らして不相当に過大であって、財産分与に仮託してなされた不当な財産の処分であると認められる場合にかぎり、詐害行為として取消の対象になるものというべきである。

そして、≪証拠≫によれば、(1)右財産分与当時、渡辺眞一の資産は本件(二)ないし(五)不動産だけであり、本件(五)土地は、その土地のうち三分の一以上を占めるものであること、(2)被控訴人渡辺は婚姻中に自己名義で取得した資産として本件共同住宅を有していたこと、(3)被控訴人渡辺は眞栄建設の取締役であり、その営業活動に深く関与していたこと、(4)被控訴人渡辺は、昭和五〇年一〇月、同五一年九月に行われた前記五社との話合いにも出席して、渡辺眞一が、眞栄建設の五社に対する債務を連帯保証し、またその債務等を弁済するために本件(二)ないし(五)の不動産を売却するが、その売却の際には、五社にもこれを連絡すると約したことを知っていたこと、がそれぞれ認められ、原審及び当審における被控訴人渡辺本人の供述中、右認定に反する部分は前掲の各証拠に照らし、直ちに措信しがたく、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。してみれば、被控訴人渡辺は右財産分与を受けることにより眞栄建設ないし渡辺眞一の債権者の共同担保を減少せしめる結果を来たすことを十分認識していたものということができる。しかし、他方、≪証拠≫によれば、(1)被控訴人渡辺は昭和三二年に渡辺眞一と結婚し、昭和三七年ころ同人が建設業を個人で営むようになってからは注文取りや取引先の接待などに従事して積極的に事業に協力し、同人が実質的にはその個人企業である眞栄建設などの会社を設立した後も同様な協力を継続してきたこと、(2)また、被控訴人渡辺は、そのかたわら、昭和三七年ころから一〇年余にわたり、自らトラックやブルドーザーを運転して産業廃棄物や残土処理、門松づくりなどを請負って相当な収益をあげてきたこと、(3)その間、眞栄建設名義で本件(三)、(四)、(五)土地の近くに土地合計約三七〇平方メートル余が取得されたが、被控訴人渡辺の右事業収益もその取得費用の一部にあてられたこと、(4)渡辺眞一名義で取得された資産としては昭和五一年三月眞栄建設の債務弁済のために売却された前記店舗兼居宅もあったこと、(5)被控訴人渡辺と渡辺眞一との離婚の原因は渡辺眞一の昭和四五年ころからの継続的不貞行為が原因であったこと、(6)離婚後、両者間の一八才から九才までの四人の子供は被控訴人渡辺が養育することになっていたこと、がそれぞれ認められ、右認定を覆すに足りる証拠はないから、これら諸事情を総合勘案すると、本件(五)土地の財産分与は、不相当に過大とはいえず、財産分与に仮託した不当な財産の処分であるとは到底認められないから詐害行為にはあたらないものといわざるをえない。

(森 片岡 小林)

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