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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)112号 判決

1 請求の原因1ないし3の事実は、当事者間に争いがない。

2 そこで、原告主張の審決取消事由の存否について判断する。

(一) 原告は、本願発明は、宛名及び他人に知られたくない情報が印字されている通信用封筒の製造方法に関するものであつて、そのような情報が印字されていない通信用封筒を対象としない旨主張する。

しかしながら、成立に争いのない甲第七号証の一、二、第九号証、第一〇号証及び第一四号証によれば、本願発明は、昭和四八年五月三一日付手続補正書により補正された本願発明の特許請求の範囲の記載(この記載自体については、当事者間に争がない。)からして、連続帳票の各単位帳票の必要とする部分に接着料を施し、切取り用のミシン目を設け、かつ、所定の個所を切り離し、切り離した連続帳票の各部分を、その上部になる帳票の裏面側と下部になる帳票の表面側とが相対するように重ね合わせ、次いで、さきに施されてある接着料によつて、その重ね合わされた連続帳票相互を袋状に接着してなる連続貼合わせ封筒の製造方法であると認められ、この連続貼合わせ封筒が宛名及び他人に知られたくない情報を印字してある通信用封筒に関するものとは限定されていない。

前掲各書証によれば、本願発明の明細書の発明の詳細な説明欄には、連続帳票の作成に関する従来技術では印字してある情報が他人に知られては不都合な場合にこれを使用できないか、又は構成複雑、印字不鮮明などの欠陥があることが説明され、かつ、「本発明は、連続帳票に直接所要の記載、情報、通達内容などを印字し、宛名、発信者など封筒として外部に露出すべきものは外部から見ることができるようにするとともに、他人に知られたくない情報、通達内容などはすべて封筒の内側に隠されて外部からは見えないように、連続帳票から連続貼合わせ封筒を作り出し、更に、それを単位帳票毎に分離して一個づつの封筒を製造するように改良したもの」(第三頁第四行ないし第一二行)であり、この単位帳票は、「所要の印刷及び情報、通達内容の印字を印字機、プリンターなどによつて表面に行なう連続帳票の各単位帳票」(同頁第一三行ないし第一六行)と記載され、更に、第一の実施例として、連続帳票から封筒を製造する具体的方法を別紙図面(一)第2図ないし第4図に基いて説明し、「前記のようにすることによつて、あらかじめ他人に知られたくない情報、伝達内容などを印字してある下半部分6の表面側は封筒ⅰの内側に隠れて外部には露出しないこととなり、また、宛名、発信者などを適宜印字してある上半部分5の表面側は封筒ⅰの外面に露出し通信用封筒として適当なものとなる。」(第六頁第八行ないし第一四行)と記載されていることが認められる。しかしながら、これらの記載を検討すると、まず右に記載された従来技術に対応する本願発明の実施態様としては、宛名及び他人に知られたくない情報を印字してある通信用封筒が最も適合するものと考えられるが、このような通信用封筒以外の帳票にも適合しうるものであり、本願発明の目的、単位帳票に関する記載には、右の通信用封筒であることを示唆する記載がされているものの、これを右の通信用封筒に限定する記載はなく、第一の実施例についても、単位帳票が必ず他人に知られたくない情報を表示したもので構成される旨の記載はなく、ただ、第一の実施例に基いて作成された帳票が右の通信用封筒として使用するのに適当とされているにとどまり、特許請求の範囲には他人に知られたくない情報の印字工程が必須の構成要件とされてなく、連続貼合わせ封筒をこのような通信用封筒に限定する記載も存しないのに、発明の詳細な説明欄のこれらの記載から本願発明の要旨を原告主張のように限定して解釈することはできない。

原告は、本願発明の詳細な説明においては、印字工程は単位帳票の利用過程における封筒作成作業に当然含まれているものとして記載されており、特許請求の範囲中の連続帳票はこれを受けたものであると主張するが、特許請求の範囲は発明の構成に欠くことができない事項を記載すべきものであつて、印字工程を必須の構成要件とするのであれば、これを特許請求の範囲に記載するのが当然であり、このような記載のない本願発明がその技術的範囲に原告主張の印字工程を当然に含むものと限定して解すべき根拠はないから、原告の右主張は理由がない。

しかも、前掲各書証によれば、本願発明の明細書の発明の詳細な説明欄には、第二の実施例として、封筒となるべき帳票の一片7の側縁に撥水紙12付粘着テープ13を置き、右撥水紙12付粘着テープ13が封筒の開放口14から外部に出ているようにして封筒を作成し、開放口14から他の書類、紙片などを挿入し、封緘を施す方法が別紙図面(一)第5図ないし第8図として記載されており、かつ、「このような封緘可能な封筒は給料封入用の封筒などに至便である。」(第七頁第一〇行、第一一行)と記載されていることからして、第二の実施例は、一旦製造した封筒(上部になる帳票の裏面側と下部になる帳票の表面側とが相対するように重ね合わされ、袋状に接着した封筒)に右のような処理を行い、給料などの封入用の封筒を製造する方法であると認められ、したがつて、その封筒は、給料、その他書類、紙片などを封入するための単なる帳票からなるものであることが明らかであり、原告の主張するような通信用封筒であると認めることはできない。

以上に述べたとおり、本願発明の特許請求の範囲にその明細書の発明の詳細な説明欄の記載ならびに添付図面を参酌しても、本願発明は、他人に知られたくない情報が印字されている通信用封筒を含む連続貼合わせ封筒の製造方法に関するものであつて、原告主張の右通信用封筒の場合はその一実施の態様にとどまり、これに限定されるとすることはできない。

そうであれば、本願発明が他人に知られたくない情報の印字されている通信用封筒の製造方法に限定されることを前提として原告が本願発明の奏する作用効果であると主張するところも、その前提を欠き失当といわなければならない。

(二) 原告は、第一引用例の紙片1、5は、本願発明の連続帳票に、第二引用例の巻取紙は、本願発明の単位帳票にいずれも対応しないから、これらの引用例は本願発明を示唆するものではないと主張する。

しかしながら、成立に争いのない甲第五号証によれば、第一引用例は、連続式紙袋の構造に関する考案であつて、長尺の紙片1の三側辺に接着料を施し、この紙片1上に接着料を塗着した全幅全長の紙片5を重合して加熱貼着し、これを一個づつの紙袋に切り離せるようにミシン孔4を形成して連続式紙袋を製造することが開示されてあり、その紙片1、5は相互に紙袋の上部と下部を構成するものとして関連性を有しているから、本願発明の分離後の連続帳票に対応するものであり、また、成立に争いのない甲第六号証によれば、第二引用例は、多重複写用紙の製造方法に関する発明であつて、二枚一組の複写用紙を製造するために、版ローラー2などによりA、B二種の印刷が施された巻取紙1をスリツター5によつて二分し、Aの印刷を施された巻取紙1aをガイドローラー6、7、8、9、10によりBの印刷を施された巻取紙1bの上方に誘導し、1a、1bを上下重ね合わせ位置に誘導するとともに、重ね合わされるまでに切取りミシン目を入れ、更に、糊付ローラー19、20によつて片側縁が糊付けされて重ね合わされ、クロスカツター21により所定の幅に截断する方法が開示されており、右一組の複写用紙は、二枚の巻取紙1a、1bが糊付けされ上下に重ね合わされて単位体を構成する点において本願発明における単位帳票と対応するものである。

そして、本願発明における連続貼合わせ封筒が前述のとおり他人に知られたくない情報を印字してある通信用封筒に限定されない以上、当業者であれば、第一引用例の分離後の帳票に第二引用例における右に述べた工程を適用することにより、本願発明に想到することは容易にしうることと認められる。

(三) 以上のとおりであるから、本願発明は第一引用例及び第二引用例のものに基き容易に発明をすることができるとした審決の判断に誤りはなく、審決には、原告の主張するような違法はない。

3 よつて、審決の取消を求める原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとする。

〔編註その一〕 本願発明の特許請求の範囲の記載は左のとおりである。

連続帳票の各単位帳票における表面又は裏面、あるいは表面と裏面との一部に通常の室温又は常圧などでは接着することのない接着料を施して該接着料を保有させ、かつ、封筒の開封を可能とする所定の個所に切取り用のミシン目を設け、更に、連続帳票からの封筒作成作業の流れの方向に沿つて所定の一個所又は数個所にて連続帳票をその長手方向に二つ又はそれ以上の部分に切り離し、このようにして切り離した連続帳票の各部分を、その上部になる帳票の裏面側と下部になる帳票の表面側とが相対するように重ね合わせ、次いで、さきに施されてある接着料によつて、その重ね合わされた連続帳票相互を袋状に接着してなる連続貼合わせ封筒の製造方法。(別紙図面(一)参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

図面

(一)

<省略>

<省略>

(二)

<省略>

(三)

<省略>

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