東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)127号 判決
事実及び理由
一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告が主張する審決取消事由の存否について検討する。
1 構成要件の欠如について
成立に争いのない甲第二号証によれば、本件考案は、洗車機を装備した走行フレームをレールに沿つて走行させるようにした可動式の洗車装置において、レールの両端に一対立設したポール間に張架した支持索条に懸架していた走行フレーム・回転ブラシなどの駆動用電力を供給する電導線及び洗浄水を供給する水道ホースの案内保持に関する従来法の諸種の欠点を解消することを目的とした(1欄二三行ないし2欄二行)、洗車装置における電導線、水道ホースの案内保持装置の改善を主題とする考案であつて、「起伏伸縮しうる中空ポール」を用いてはいるが、それ自体の構成に関する考案でないことが明らかであるから、中空ポールを如何にして起伏伸縮させるかの点について構成を限定する必要はない。
そして、本件実用新案登録請求の範囲には「……支持柱と前記走行フレームとに、前記レールに沿つて起伏伸縮しうる中空ポールの両下端を回動自在に軸支し……」と記載されているから、起伏伸縮しうる中空ポールは、回動自在に軸支された両端があり、またその回動自在に軸支された両端が中空ポールの下端となるものであり、しかも、起伏伸縮しうるところは、相関連して両端の間で上端となるべきところである。そして、その上端となるべき部分の起伏伸縮に関する実施の一例も示されているから、中空ポールは、両端の間で上方に起伏伸縮できるよう具体的に相関連づけられ、組合せが示されている一連のポールということができる。
したがつて本件考案は、原告主張のような中空ポールが中ぶらりんのものということはできず、上方起伏伸縮の要件を備えた一連のものとしての具体的構成に欠けることはないので、実用新案法第五条四項の規定する要件を満たしていないとする原告の主張は採用することができない。
2 進歩性否定に関する周知技術の存在について
成立に争いのない甲第三号証は、電話送受器支持装置に関する昭和三七年六月二一日出願、昭和三九年一〇月二一日公告の実用新案公報(別紙図面(二)参照)であるが、送受話器を自由の空間位置に固定し両手を放して通話する事が出来る装置を提案するものであつて(一頁左欄二六行ないし二八行)、ジヨイント部d、e、fにおいて屈折しうるように連結された支持杆a、b、保持部片cより成り、a、b、c内部に電話線が通設されて電話送受話器を支持しているものであるが、これのみをもつてしては、本件考案のような洗車装置における電導線、水道ホースの案内保持装置のような技術分野をも含んだ「伸縮自在な中空ポール」ましてや「電導線、水道ホース等の案内保持装置」に関する一般的な周知技術を具体的に示しているとは到底いえず、また前記認定のように、本件考案は「起伏伸縮しうる中空ポール」それ自体の考案でもなく、またそれを単に適用した考案でもないのであり、さらに弁論の全趣旨によれば、そもそも甲第三号証は本訴において初めて提出されたものであつて、右認定の範囲を超えてそこに具体的に示される如何なる周知技術が、洗車装置における電導線、水道ホースの案内保持装置の先行技術のどの部分に対するどのような適用が、本件考案において当業者が極めて容易になしうるものであるかについては、本件無効審判手続において判断の対象とはなつていなかつたものであり、いずれにしても、進歩性否定の根拠たる周知技術の存在を前提とする原告の主張は採用することができない。
三 そうすると、原告の主張はいずれも理由がなく、本件審決を違法としてその取消を求める本訴請求は失当として棄却すべきものである。
〔編註その一〕本件登録実用新案に関する事項は左のとおりである。
一 特許庁における手続の経緯
被告は、昭和四六年三月一〇日、名称を「洗車装置における電導線、水道ホースの案内保持装置」とする考案(以下「本件考案」という。)について実用新案登録出願(昭和四六年実用新案登録願第一五〇三二号)をし、昭和五〇年一一月五日出願公告(昭和五〇年実用新案出願公告第三八二三四号)され、昭和五一年六月一四日第一一三二五五二号をもつて登録された。
これに対し、原告が、昭和五二年五月一四日、登録無効の審判(昭和五二年審判第六六三九号)を請求したところ、昭和五六年三月三〇日「本件審判の請求は成り立たない。」との審決がされ、その謄本は同年四月一八日原告代理人に送達された。
二 本件考案の要旨
洗車機を装備した走行フレームの案内用レールに近接して支持柱を立設し、この支持柱と前記走行フレームとに、前記レールに沿つて起伏伸縮しうる中空ポールの両下端を回動自在に軸支し、該中空ポール内に前記走行フレームに連結される電導線、水道ホースを挿通してなる洗車装置における電導線、水道ホースの案内保持装置。
(別紙図面(一)参照)
〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。
別紙(一)
<省略>
別紙(二)
<省略>