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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)157号 判決

事実及び理由

一  請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、審決にこれを取り消すべき違法の点が存するかどうかについて検討する。

1  成立について争いのない甲第二号証の二、三(本願考案の願書に添付された明細書及び図面)によれば、本願明細書には、実用新案登録請求の範囲として、前示のとおり当事者間に争いがない本願考案の要旨(事実摘示第二の二参照)が記載され、別紙図面(一)のとおり本願考案の実施例を図示した図面を添付して、考案の詳細な説明の項に、本願考案は、「プレーナにおける門形状の支柱に、プラノミラのミーリングヘツドを取付けてプラノミラとして使用するに際し、従来は支柱のクロスレールにプラノミラ用ミーリングヘツドを取付けてい」たが、「プレーナの切削刃の重量に比しミーリングヘツドの重量が著しく重く、そのためプレーナのクロスレールに大きい馬力のプラノミラ用ミーリングヘツドを取付けたのでは安定性が悪くそのため中心がずれて刃を折損する虞れがあ」つたので、「これらの欠点を解消し、プレーナのクロスレールでも大きい馬力のプラノミラ用ミーリングヘツドを取付けられるようになし……切削能率を向上せしめんとするものであ」つて、「プレーナにおける門形状の支柱に上下の調節が自在なるクロスレールを架設すると共に支柱には、クロスレールの上下方向に補助クロスレールを上下の調節が自在なるよう取付けてあるのでプラノミラ用ミーリングヘツドの大きさに応じてクロスレールと補助クロスレールの間隔を調整し、ミーリングヘツドを取付けるのでミーリングヘツドの全体が確実に固定され、安定性が良く、切削時においてミーリングヘツドの中心がずれることなくスムーズに切削が出来て、刃の折損もない。」との効果を奏するものである旨の説明が記載されている。

ところで、門形状の支柱に架設されたクロスレールにミーリングヘツドを締着したプラノミラにおいて、ミーリングヘツドが安定性を失いその中心がずれ、甚だしいときには刃が切損するとの現象は、単にミーリングヘツドを装着した際その重量によりクロスレールがたわみ、或いは、よじれることによつて生じるのみならず、切削時における切削抵抗により、ミーリングヘツドが上下、左右、前後の各方向を問わず、あらゆる方向からの強い衝撃にさらされることによつて生じることは技術常識に照らして明らかである。このことを前提に当業者が前認定の本願明細書及び図面の記載に接すれば、本願考案における補助クロスレールは、実用新案登録請求の範囲に記載されているとおり、クロスレールの上下に上下の調節が自在に架設され、これにミーリングヘツドが締着されるものとして構成されることを不可欠の要素としているのであつて、本願考案の取付装置を使用するに際しては、装着すべきミーリングヘツドの大きさに応じてクロスレールと補助クロスレールの間隔を調整し、ミーリングヘツドをその上下端近くにおいて上下の補助クロスレールに締着することにより、ミーリングヘツドの安定性が向上し、その中心もずれない等の効果を奏するというのであるから、本願考案の補助クロスレールは、単にクロスレールとともにミーリングヘツドの重量を支承するとの機能を有するものであるにとどまらず、前記のように構成されていることによつて、ミーリングヘツドに加わる水平方向の力によるその振動に対して、これを受けとめミーリングヘツドの安定を保持する機能(横振れ防止機能)を与えられているものと、容易に理解することができるものというべきである。換言すれば、本願考案における補助クロスレールは、ミーリングヘツドの横振れ防止機能を有するものであつて、この機能を果たし得るよう、クロスレールの上下に上下の調節が自在なるように架設され、これにミーリングヘツドを締着すべきものとして構成されているものと認められる。

2  これに対し、成立について争いのない甲第三号証の特公昭三九―一三二八二号公報(引用例)には、別紙図面(二)に示すとおりの図面をもつて説明を補足しつつ、門形平削盤、平削フライス盤、門形ジグ中ぐり盤等において、門形状の垂直コラム5・5′(支柱)に上下の調節が自在な横架1(クロスレール)を架設するとともに、該横架の下側にこれと平行に補助横架11(補助クロスレール)を上下の調節が自在なるように門形支柱状の補助横架上下ねじ21・21′に架設し、右横架1には左右の調節が自在で且つ任意の位置で停止されるようにヘツド3を取り付け、補助横架11の上面をころがり案内面13としてここにころがり軸受け12を介してヘツド3の重量を支承させるようにしたヘツドの取付装置が記載されている。

引用例の右ヘツド取付装置は、「横架上の精密直動案内面に平行なころがり案内面を有する補助横架をもうけ、ヘツドの重量を主としてころがり案内面に受け、かつ、ころがり案内面にかかる荷重が、精密直動案内面に伝わらないようにし、ヘツドには常に差引き上向きの力がかかる状態で、ヘツドが安定しているようにすること」(引用例の第一頁左欄三八行目ないし四三行目)を目的としているものであつて、ヘツドに差引き上向きの力を加えるためには、第二図のものにあつては、軸17を支点とする挺子棒16を介して重鍾20の重量を着力点19においてヘツドに上向きに作用させ、第三図のものにあつては、油圧シリンダ16によりそのピストン棒20を介してヘツドに上向きの力を作用させるようにしてあり「ころがり案内面13は、荷重を負担するのが主目的であり、案内精度はすべり案内面10及び9で得られるから、ころがり案内面13はあまり高精度である必要はなく、補助横架11もあまり剛性を大きくする必要がない。補助横架11と横架1とは分離されているから、荷重による補助横架11のたわみは全く横架1に影響しない」(同第一頁右欄三五行目ないし四一行目)ものである。

3  以上の認定によれば、引用例のものにおける補助横架は、ヘツドの重量を支承する機能を有し、更には、ヘツドに上向きの力を作用させるための土台としての機能を有するものではあるが、ヘツドの横振れ防止機能はなんら有していないものというほかなく、本願考案における補助クロスレールとその機能を異にすることは明らかである。

本願考案においては、前示のとおり、補助クロスレールにミーリングヘツドの横振れ防止機能を与えるために、クロスレールの上下に上下の調節が自在なるように配設したものであつて、その配設箇所の選定に技術的意義が存するというべきところ、審決は、相違点(2)についての判断においては、本願考案の補助クロスレールの機能が単に耐荷重の点にのみあるものと誤認して、本願考案において補助クロスレールをクロスレールの上下に配設したことをもつて、引用例の補助横架を単に算術的に倍増したにすぎないものとして、右配設箇所の選定についての本願考案における技術的意義を顧慮していないのであるから、相違点(2)に関する審決の判断は是認できないものというほかない。なお、被告は、本願考案の補助クロスレールがミーリングヘツドの横振れ防止機能を有するとしても、補助クロスレールをクロスレールの上下に配設することは一本の場合の算術的倍増にすぎないとも主張するが、これは対比さるべき引用例のものにおいて補助横架がヘツドの横振れ防止機能を有している場合にのみ妥当し得る主張であるから、その前提を欠くものとして失当というべきである。

審決は、更に、相違点(3)についての判断において、引用例のものにおいてヘツドを補助クロスレールにも締着するようにすることは、当業者がきわめて容易にできる程度のことであるとしている。しかしながら、引用例のヘツド取付装置においては、補助横架はヘツドの重量を支承しているにすぎないから、補助横架のころがり案内面にころがり軸受が載つていればよいのであつて、しかも、ヘツドは横架の上下すべり面9・10とかみあつた状態で横架に対し締着されているものと認められるから、ころがり案内面からころがり軸受けが外れることは考えられず、補助横架にまでヘツドを締着する必要性はないものというべきであるし、また、ヘツドの重量をころがり案内面に受けるに際し、ころがり軸受けをころがり案内面上に載せるにとどめていることが、補助横架を土台にしてヘツドに上向きの力を作用させるのに適した構成になつていることも明らかであるから、補助横架をもつてヘツドの横振れ防止機能を具有させるとの積極的課題認識を欠いた引用例のものにおいて、補助横架にまでヘツドを締着する発想は生じ得ないものというべきである。これに反する審決の前記判断も誤りというのほかはない。

三  以上のとおりであるから、審決は本願考案と引用例記載の考案との対比において判断を誤り、その誤認を基礎として本願考案は引用例に記載されたもの及び周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものとした違法なものというべく、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は理由があるのでこれを認容する。

〔編註その一〕本願考案に関する事項は左のとおりである。

一  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和四六年一一月一七日、名称を「プラノミラにおけるミーリングヘツドの取付装置」とする考案(以下「本願考案」という。)について、昭和四六年実用新案登録願第一〇七五五一号をもつて実用新案登録出願をしたところ、昭和五一年一一月三〇日に拒絶査定があつたので、同年一二月二五日、これに対して審判を請求したが、昭和五二年審判第三三六号事件として審理された結果、昭和五六年五月一日、右審判の請求は成り立たないとの審決があり、その謄本は、同月一九日、原告に送達された。

二  本願考案の要旨

プレーナにおける門形状の支柱に上下の調節が自在なるクロスレールを架設するとともに、この支柱には更にクロスレールの上下方向に補助クロスレールを上下の調節が自在なるように取り付け、これらクロスレール及び補助クロスレールに左右の調節が自在で且つ任意の位置で締着自在なるようミーリングヘツドを取り付けるようにしたプラノミラにおけるミーリングヘツドの取付装置。

〔編註その二〕本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面(一)

<省略>

<省略>

別紙図面(二)

<省略>

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