大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)187号 判決

一 請求の原因一ないし四の事実は、当事者間に争いがない。

二 原告は、本件補正却下決定の誤りを主張し、これを前提として本件審決における本願発明の要旨認定の誤りを主張するので、まず、本件補正却下決定の当否について検討する。

本件補正において、「コークス誘導篭を熱放散しないように二重壁にて構成する」点を、本願発明の構成に欠くことができない事項の一部として付加していることは、原告の明らかに争わないところである。

ところで、成立について争いのない甲第二号証によれば、出願当初の本願発明の目的は、補正前の明細書の発明の詳細な説明の項に記載されているごとく、「定点作業といつて一度の炉室前停止にて、炉蓋の脱着から押出しコークスの誘導までの全行程を遂行し得るコークガイド車を新しく提案するもので、作業能率と公害を画期的に改善する」ことであり、その目的を達成するために、コークガイド車の構成を特許請求の範囲(事実摘示第二、二、1参照)のごとくしたものであることが認められ、ドアーリフターとジヤムクリーナーがコークス誘導篭からの熱放散を受けないようにすることをも発明の目的とするという点については、一言半句の記載もなく、またその課題を解決する手段についても全く記載されていない。

しかるに、補正後の発明は、前認定のとおり、「コークス誘導篭を熱放散しないように二重壁にて構成する」点をその構成要件とするものであり、補正前の明細書に全く記載されていなかつた事項を発明の目的として付加するものであるから、その補正は実質上特許請求の範囲を変更するものであるといわなければならない。

原告は、コークス誘導篭を二重壁にて構成することは、本願発明の出願当初の図面に記載されているところであるから、本件補正は特許請求の範囲を減縮するものであり、特許請求の範囲を実質上変更するものではない旨主張する。

しかしながら、本件補正が特許請求の範囲を減縮するものであるとしても、本件補正は、出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達後においてされたものであるから(右の点は当事者間に争いがない。)、特許請求の範囲を減縮するものであるということ自体で特許請求の範囲を実質上変更するものではないということはできず、本件補正は特許請求の範囲を実質上変更するものであると認むべきことは前説明のとおりであるから、原告の前記主張は理由がない。

してみれば、本件補正は実質上特許請求の範囲を変更するものであるとして、これを却下した決定は相当であり、これを是認して本願発明の要旨を補正前の発明のとおりとした審決の要旨認定も誤りはないというべきである。

しかして、審決が要旨認定した本願発明が引用例に記載された発明であるとした審決の認定については、原告はこれを争わず、また、前掲甲第二号証に成立について争いのない甲第一一号証を対比すれば、審決認定のとおり本願発明は引用例に記載された発明であると認められるから、審決にはこれを取消すべき違法の点はない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註その一〕 本願発明に関する事項は左のとおりとする。

一 特許庁における手続の経緯

原告は、名称を「コークガイド車」とする発明(以下、「本願発明」という。)につき、昭和四八年一二月二一日特許出願をしたところ、昭和五四年三月六日出願公告(特許出願公告昭五四―四三六三号)されたが、特許異議の申立があり、昭和五五年一月一四日手続補正書を提出した(以下、この補正を「本件補正」という。)が、同年三月二八日、補正の却下の決定(以下、「本件補正却下決定」という。)とともに拒絶査定を受けたので、同年六月二六日拒絶査定に対する審判を請求し、特許庁昭和五五年審判第一一五五四号事件として審理され、昭和五六年五月二〇日右審判の請求は成り立たない旨の審決があり、その謄本は同年六月一七日原告に送達された。

二 本願発明の明細書の特許請求の範囲

1 昭和五五年一月一四日付手続補正書による補正前の発明(以下、単に「補正前の発明」という。)に係るもの

進退するコークス誘導篭を挟んで左右に旋回前後進するドアーリフターとジヤムクリーナーを設けて、一度の炉室前停止にて炉蓋の脱着と押出しコークス誘導までの全行程を行うことを特徴とするコークガイド車。(別紙図面参照)

2 昭和五五年一月一四日付手続補正書による補正後の発明(以下、単に「補正後の発明」という。)に係るもの

積載する炭塵捕集フード下を直線的に前後進するコークス誘導篭を熱放散しないよう二重壁にて構成すると共に、その左右に間隔を置いて旋回前後進するドアーリフターとジヤムクリーナーを設けて、一度の炉室前停止にて炉蓋の脱着から押出しコークス誘導までの全行程を炭塵の舞上がりを防止しつつ遂行することを特徴とするコークガイド車。

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面

<省略>

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