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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)205号 判決

本件審決に原告主張の違法が存するか否かについて検討する。

1(一) 本件商標の構成、指定商品、商標登録の出願日、登録日及び被告が本件商標の商標権者であることは、前項記載のとおりである。

(二) 成立に争いのない(中略)を総合すると、聯合有機化学は、昭和三五年ころから本件商品の製造販売を始め、その後これを継続して現在に至つていること、同社は、被告が本件商標の登録を出願した昭和三九年当時、本件商品の包装用紙箱と充填用チユーブに別紙(三)、(四)のとおりの、「カミロンランス」の片仮名文字及び「camilon」、「REIMS」の欧文字を用いた標章を使用しており、その後も、少くとも昭和四三年四月二五日ころに至るまでの間は、右標章の使用を続け、昭和四三年一月ころ以降新たに製造販売する本件商品の包装用紙箱には、「カミロンランス」の片仮名文字と「camilonreims」の欧文字を、各文字の大きさを同じくし、かつ、これを一連に横書してなる標章(乙第一五ないし第一七号証参照)を使用していることが認められ、被告本人尋問の結果中、聯合有機化学が昭和四〇年以降は別紙(三)、(四)の標章を使用しなかつた旨の供述部分は、前記各証拠に照らして措信し難く、他に右認定を覆すべき証拠はない。

そして、聯合有機化学が本件商品について使用した右各標章は、いずれも「カミロンランス」という片仮名文字を明瞭に含んでいる点において、本件商標と明らかに類似するものというべきである。

(三) ところで、成立に争いのない甲第六号証、乙第四、第二八号証及び被告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によると、聯合有機化学は、昭和二五年に医薬品、医薬部外品及び化粧品の製造等を目的として設立された株式会社であるが、被告は、その設立以来現在に至るまで唯一人の代表取締役として経営全般を掌握し、本件商品に使用する標章についても自らこれを決定し、その構成態様をよく知悉していたこと、また、これまで被告が本件商標の商標権者としての立場から聯合有機化学が本件商品に前認定の各標章を使用することを止めさせようとしたことはなかつたこと、被告は、昭和四五年五月一三日「カミロンランス」と横書きした文字商標につき、指定商品を第四類「せつけん類」その他として商標登録の出願をし、その旨の登録を得たが、これははじめから聯合有機化学に使用させるつもりであつたことが認められる。

(四) 以上(一)ないし(三)認定の各事実を総合して考えると、被告は、遅くとも本件商標の登録日である昭和四〇年八月六日当時、聯合有機化学に対し本件商品に本件商標と類似の標章を使用することを少くとも黙示的に許諾しており、この関係は、その後も原告主張のとおり継続していたものと認めるのが相当である。

2 右認定の点について、被告は、本件商品は第四類石けん等に属するものと考えていたから、これに指定商品を医薬等とする本件商標を使用することを許諾すべきいわれはない旨主張している。

そして、前掲甲第九、第一〇、第一七号証、成立に争いのない甲第一三、第一九号証、乙第三、第二三号証及び被告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によると、被告は、本件商標権を取得する前の昭和三四年四月八日、「カミロン」の片仮名文字を横書きしてなる商標(乙第三号証参照)について、旧第四類「石けん」を指定商品とする商標登録の出願をし、昭和三五年八月二日その登録(登録番号第五五三八二四号)を得たこと、被告は、当時本件商品が商標法上の商品区分としては旧第四類「石けん」に含まれるものと考えていたこと、聯合有機化学は、昭和三五年ころ、本件商品の包装用紙箱に、別紙(五)のとおり、「カミロンランス」の片仮名文字を、「ランス」の文字より小さくして横書きし、更に、「Camilon」及び「Camilon Reims」の欧文字をそれぞれ横書きしてなる標章を使用し、昭和三六年ころから後は、本件商品の包装用紙箱と充填用チユーブに別紙(三)、(四)の標章を使用していたことが認められる。

しかし、被告が本件商品をもつて旧第四類「石けん」に属するものと考えていたところで、聯合有機化学が本件商品に薬剤類を指定商品とする本件商標を使用することを許諾すべきいわれがなかつたことの根拠とすることは、相当でない。前掲甲第九、第一〇号証によると、本件商品については、「ふけ、かゆみ薬用シヤンプー」または「ふけ、かゆみ止め洗髪薬」なる表示を用いて、それが薬用のものであることを明示していることを認めることができ、したがつて、本件商品が商標法における商品区分上何れの範疇に属するかを問わず、薬用的効果を奏すべきものとして、被告がこれに指定商品を薬剤とする本件商標に類似する別紙(三)、(四)の態様による標章の使用を許諾すべきことは、経験則に照らし、十分に考えうることだからである。このことは、以下の事実に徴しても明らかである。

すなわち、前掲甲第九、第二三号証、乙第一九号証、成立に争いのない甲第七、第二二号証、乙第一九号証及び被告本人尋問の結果によると、被告は昭和三五年二月ころ聯合有機化学の代表者として、厚生大臣に対し、薬事法一四条に基づき、本件商品について商品名を『カミロン「ランス」』とする公定書(日本薬局方)外医薬品の製造許可申請をし、同年五月ころその許可を得たが、右申請の際に受けた行政指導により本件商品が薬事行政上は医薬品として扱われていることを知つたこと、被告はその後に訴外興和株式会社が本件商標の登録取消を請求した審判事件において、聯合有機化学の代表者として、同社が本件商品に「カミロンランス」の文字を横書きしてなる標章を使用するに至つたのは、右製造許可を得た際の商品名と一致させることを目的としたものであつたとの趣旨を記載した答弁書を提出したことが認められるが、これらの事実は前認定を裏付けるものというべきである。

3 以上によれば、被告が聯合有機化学に対して本件商標の使用を許諾したことが認められず、同社は本件商標の通常使用権者と認めることができないとした本件審決は、事実を誤認したものというべく、これを前提として、その余の点について論ずるまでもなく請求人(原告)の本件審判請求は成り立たない旨結論した本件審決は判断を誤つたもので、違法として取消を免れないといわざるをえない。

よつて、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は理由があるから、これを認容する。

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