東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)24号 判決
原告の主張する審決取消事由の存否について検討する。
(一) その(一)の主張について
原告は、審決が両商標における「ミ」と「チ」の音の相違を不当に等閑視していると主張する。
よつて検討するに、成立に争いのない甲第二号証の一及び第三号証によれば、本件商標は、別紙第一に記載のとおり、「ヘルパミン」の片仮名文字を横書きして成るものであり、引用商標は、別紙第二に記載のとおり、「ヘルパチン」の片仮名文字と「HELPACIN」の欧文字とを二段にそれぞれ横書きして成るものであることが認められるから、それぞれ「ヘルパミン」「ヘルパチン」の称呼を生ずるものと認められる。
そこで、この両称呼を比較すると、「ミ」音と「チ」音との間には、原告指摘のように子音部分の差異及び音声学的な相違があるとしても、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、ともに五音構成であり、「ミ」と「チ」の音を除く他の四音は全く同一であるうえに、「ミ」と「チ」の音はそれぞれ母音を共通にするものであるから、五音中の同位置にある中間の一音についての原告指摘のような相違だけで、取引者、需要者が両者を常に全体の音感、音調等について区別し別異なものとして聴き分けるとは経験則上認められないのであつて、これを称呼上類似の商標と判断した審決の判断に誤りはなく、原告の主張は理由がない。
(二) その(二)の主張について
原告は、審決が両商標の語調における差異の認定を誤つていると主張する。
しかしながら、本件商標と引用商標とは前項認定のとおりの五音から成る構成であり、いずれも観念において特段の意味を有しない造語と認められるから、これが称呼される場合には、原告主張のように語調の相違、差異音が特に強調されることも全くないとはいえないとしても、通常一般には、「ヘルパミン」、「ヘルパチン」と一連に称呼され、語調に格別の差異が生ずることはなく、同一音調でかつ連続的に発音されるものとするのが自然である。
したがつて、審決が両商標の称呼を一連に称呼するときは両者は語調が近似し、取引上相紛れるおそれがある程度のものと判断したことに誤りはなく、原告の主張は理由がない。
よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。
〔編註〕本件に関する商標は左のとおりである。
第一
<省略>
第二
<省略>