大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)259号 判決

審決取消事由の存否について判断する。

成立について争いのない甲第二号証及び第三号証によれば、本件意匠(〔編註〕 意匠に係る物品は手カギの柄)と引用意匠とは、次の一致点が存することが認められる。

すなわち、両者は、いずれも、全体をJ字状とした棒体であつて、その棒体は全長をほぼ三等分(前方、中央、後方<握り止め>の各部分に区分け)すると、前方部分はほぼ円柱状、後方部分の中央付近はほぼ長楕円柱状に形成し、それらの太さは、前方部分において、その前端部分をやや細く、その中央付近をやや太くし、中央部分から後方部分の後端へかけて漸次太くし、後端面は平坦状とし、その後端部分は分厚く扁平であり、弧状の部分から左右にやや膨出した態様であり、その構成比率は前方部分で、その前端の小さな直径部分に接続する部分の直径を1とすると、全長はほぼ22である。

一方、本件意匠の中央部分が、前方部分の中央付近の太さよりもその太さをやや細くしているのに対し、引用意匠の中央部分は前方部分における中央付近とほぼ同径である点において、本件意匠と引用意匠とは一応の差異があるものと認められる。

なお、審決は引用意匠は仔細に各部の形態を観察することができないが、その写真版の陰影から判断して、中央部分の円柱状から漸次後方部分へと楕円柱状に形成されているものと認められ、この点で、本件意匠に係る手鉤の柄の中央部分から後方部分にかけてほぼ楕円柱状をなしているのと差異がない旨の判断をしているが、甲第三号証から引用意匠のものが中央部分から漸次後方部分へと楕円柱状に形成されているものと断定することはできない。

しかしながら、本件意匠と引用意匠との前認定の相違点は、いずれも、両者の前認定の共通点の中の部分的小差にすぎず、両意匠を全体として非類似とするほどのものであるとすることはできず、両意匠の共通点を抽出し、これをもつて両意匠は互いに類似するものとした審決の結論には誤りがない。

原告は、本件意匠に係る手鉤は専ら漁業関係者用のもので、冷凍魚体等を引きずつて移動させることを主とするものであり、その握りに便宜なように中央部分から後方部分にかけてほぼ楕円柱状にしたものであるところ、これとは用途の異なる袋鉤の持柄は円柱状の方が機能的であるから、本件意匠と引用意匠とは右部分を楕円柱状としたか円柱状としたかで異なる旨の主張をする。

しかしながら、本件意匠は、意匠に係る物品を「手カギの柄」とするものであつて、その先端に取付けられる手鉤の種類によつて魚業用とも、袋鉤ともなり得るものと認められる――現に本件審判請求人(被告ら)が審判手続で提出した三木金物カタログ一九七〇(甲第三号証)第八九頁魚カギMK―八一九は先端に付けられている鉤が異なるだけで、柄の形態は引用意匠とは殆んど異ならないものと認められる――のみならず、引用意匠のものは袋鉤であつて、袋鉤は持柄部分を円柱状とした方が機能的であるから、引用意匠に係る手鉤の持柄部分は円柱状のものであると断定し得るような証拠もない。原告の主張は理由がない。

右のとおりであつて、本件意匠と引用意匠とを類似するとした審決の認定判断に誤りはなく、これが違法であることを理由にその取消を求める原告の本訴請求は失当である。

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