大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)269号 判決

一 請求の原因1ないし3の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決取消事由の存否について判断する。

(一) 成立に争いのない甲第二号証の一ないし三、第一七号証によれば、昭和五六年三月一八日付手続補正書により最終の補正がされた後の本願発明の特許請求の範囲は、第二請求の原因2の項記載のとおりであつて(この記載自体については、当事者間に争いがない。)、本願発明は、対象を「アンビルなし衝撃雷管」と限定した発明であり、<1>雷管が着火した時にも本体部の一体性を維持しうる性質と厚さを有する延展性ある材料製のカツプ形状本体部分を有すること、<2>前記カツプ形状本体部分は、密に詰めた雷管装薬を含有しており、その前端は有効に開放していてアンビルを備えていないこと、<3>前記の密に詰めた雷管装薬は、撃針による衝撃とカツプ状本体部分の基部の変形とにより、アンビルの作用によらずして、衝撃的に着火されるように配合され詰められていることを特徴とするものと認められる。

本願発明の特許請求の範囲の記載には、その対象である衝撃雷管が薬包の組立て以前の状態のものに関するか、薬包の組立て以後の状態のものに関するかについて、直接的に表現した部分は見当らない。

しかしながら、前記特徴部分<3>は、衝撃的に着火されるうえでの関連構成が明確に記載されているものとはいい難いとしても、雷管装薬が着火されるための構成を示しているものであり、これを前記特徴部分<2>と総合して考察するならば、本願発明における衝撃雷管は、薬包に組立てられた以後における衝撃雷管をいうものと解するのが相当である。このことは、前掲甲第二号証の二、三によれば、本願発明の明細書の「発明の詳細な説明」には、「本発明は、雷管セツトバツク式又はピストン式雷管型の薬包(弾薬筒)並びにセツトバツク式又はピストン式雷管型及びその他発射薬粉末又は類似物の瞬間的着火が必要とされる場合の薬包に使用するための衝撃雷管に関するものである。」(第一頁第一三行ないし第一八行)との記載があり、かつ、「本発明の雷管は、薬包の中で可動ピストンとして機能しうる構造を持つものとして薬包と関連して図示されている。」(第四頁第一七行ないし第一九行)との記載があつて、別紙図面(一)第1図には、薬莢13を有し可動ピストン雷管15と発射体21と発射薬31とを包含する薬包11の縦断面図、第2図には、その薬包11が銃身41の薬室41a内に挿入された状態の断面図、第3図には、撃針61が可動ピストン雷管15の薄壁ウエブ状基部15cを打つた状態を示す断面図、第4図には、可動ピストン雷管15が発射薬ガス圧で後方へ押され撃針を後退させる状態を示す断面図がそれぞれ示されており、これらの記載及び図面は、いずれも、薬包に組立てられた以後における衝撃雷管であることを当然の前提として理解されるものであることから、明らかである。

したがつて、本願発明の特許請求の範囲の記載には、表現上必ずしも十分であるといえない点が存するけれども、本願発明は、薬包に組立てられた以後における衝撃雷管について、前記特徴部分<1>ないし<3>をその構成要件とする発明というべきであつて、本願発明を薬包に組立てられる以前の衝撃雷管に関するものとするのは当を得ない。

(二) 成立に争いのない甲第一四号証によれば、第一引用例は、発明の名称を「雷管組立体」とし、雷管付薬莢に衝撃着火するための弾薬雷管及びこのような雷管を薬莢につける改良方法に関するものであり、確実かつ有効な着火を達成するうえで、アンビルを備えることを前提として、このアンビルを含む雷管部分の構造を雷管燃焼時に発生する圧力に耐えうるようにしたものであつて、組立てられた薬包中にアンビルを備えた在来型の雷管の構成が示されているものと認められ、本願発明のアンビルを有しない衝撃雷管とはその構成を全く異にしており、本願発明について何ら示唆するところがないことは明らかである。

(三) そうであれば、審決は、本願発明の要旨を誤認し、かつ、その誤認を前提として本願発明と前認定のとおりの第一引用例とを対比した結果、本願発明は第一引用例及び第二引用例の記載に基いて容易に発明をすることができたものと誤つて判断したものであるから、違法であり、これが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求は、理由があるから、これを認容する。

〔編註その一〕 本願発明の特許請求の範囲の記載は左のとおりである。

雷管が着火した時にも本体部の一体性を維持しうる性質と厚さを有する延展性ある材料製のカツプ形状本体部分を有するアンビルなし衝撃雷管であつて、前記カツプ形状本体部分は、密に詰めた雷管装薬を含有しており、その前端は有効に開放していてアンビルを備えていず、かつ、前記の密に詰めた雷管装薬は、撃針による衝撃とカツプ状本体部分の基部の変形とにより、アンビルの作用によらずして、衝撃的に着火されるように配合され詰められていることを特徴とするアンビルなし衝撃雷管。

(別紙図面(一)参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面 (一)

<省略>

<省略>

(二)

<省略>

(三)

<省略>

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