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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)297号 判決

一 原告ら主張の請求の原因一ないし三の各事実(特許庁における手続の経緯、第一発明の要旨及び審決の理由の要点)については、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決取消事由の存否について検討する。

1 まず、原告らは、第一発明のパルスモータは、ステツプ角をθとすると、回転を開始した位置でトルクは最大でθ角旋回した位置でトルクはOであるから、トルクが残存している位置でクランクアーム(14)を停止すればセレクターレバー(15)の先端も残存したトルクでセレクターバツト(16)を押圧することができ、したがつて、クランクアーム(14)の最大揺動位置でなく一揺動量内でできるだけトルクが大きい状態の位置でクランクアームの揺動を積極的に停止させ、その状態を保持させるようにし、これによつて、選針作用を確実なものとすることができるという特異な作用効果を期待できるようにしたものである旨主張する。

ところが、成立について争いのない甲第二号証の四によれば、前記第一発明の要旨における「一揺動量内でセレクターに対応させて柄出し選針を行う」という点は、昭和五三年三月三一日付手続補正書により補正加入されたものであり、しかもその際、その加入の技術的意義について全く説明されていないことが認められるところ、このように、「一揺動量内」についてその技術的意義が全く明細書中に説明されてない限り、これを普通のパルスモータの「一揺動量」として構成を把握したとしても誤りとはいえず、むしろ、素直な解釈ということができる。また、仮に技術的意義が原告らの主張する点にあるものとしても、「一揺動量内」には、前半部、中央部、後半部と漸次トルクが変化する各部分が考えられ、単に「一揺動量内」としただけでは、必ずしも有効な残存トルクをセレクターに与えることを意味するとみることはできないから、原告らの主張は、この点からも失当である。そうすると、審決には原告らの主張するような第一発明についての解釈の誤りはなく、原告らの右主張はその前提を欠き失当といわなければならない。

2 つぎに、原告らは、引例二に記載されたステツプモータは信号が入力されるごとに反対方向に回転するのに対し、第一発明のパルスモータは異種の信号が入力されなければ回転せず、この点で両者は相違し、引例二記載のステツプモータを選針装置に利用することはできない旨主張するが、成立について争いのない甲第四号証によれば、引例二に記載されたステツプモータは、例えばデジタル信号の「O」または「一」の入力があると回転角θの範囲でその回転軸は回転し、つぎに同種の信号が入力されても回転せず、異種の信号が入力されたときにはじめて反対方向に回転するものであることが明らかであり、その点で第一発明のパルスモータと異なるところはないから、原告らの右主張は理由のないものである。

3 以上のとおりで、審決にはこれを取消すべき認定判断の誤りはないものといわなければならない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消を求める原告らの本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註〕 本願発明に関する事項は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

原告らは、昭和四七年一月二一日、特許庁に対し、名称を「電子式柄出し編機の選針装置」とする発明につき、特許出願(共同出願。昭和四七年特許願第八〇九三号)をしたところ、昭和五二年七月二九日特許出願公告されたが、特許異議の申立があり、昭和五四年三月一二日付で拒絶査定をされたので、これに対する審判を請求した。特許庁は、これを同庁同年審判第五二三〇号事件として審理の上、昭和五六年一〇月五日、右審判の請求は成り立たない旨の審決(以下「審決」という。)をし、その謄本は、同年一一月一一日原告らに送達された。

二 前記特許出願の願書に添付された明細書の特許請求の範囲第一項に記載された発明(以下「第一発明」という。)の要旨

A 所望の編柄を二進数またはその他の表示による柄信号として永久記憶物に記憶せしめた後、編機のそれぞれ独立して運動する編針の編成動作に同期して編成中のコースの柄信号を読み出して編機の選針部に設置した選針装置に伝送し、選針作用を行わせる柄出し方式の編機において、

B 柄信号に応じて選針作用を行う電―機変換機としてパルスモータを使用し、一揺動量内でセレクターに対応させて柄出し選針を行うことを特徴とする電子式柄出し編機の選針装置

(符号A及びBは、本判決で付したもの)

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