大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)75号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決取消事由の存否について判断する。

1 審決は、本願考案と第一引用例との一致点、相違点につき、「本願考案が軸受外輪体2の外周面に、外輪体の中心に対して偏心する凹溝を設けたものであるのに対して、第一引用例のものは、外輪3に同心状の溝12を設けたものである点で相違している以外の点では、両者は一致している」としているところ、原告は、本願考案と第一引用例とは右相違点のほかに、各嵌合部における合成樹脂製支持体ないし合成樹脂製溝付輪の各突条が中心に対して偏心しているか同心であるかの相違があるのに、審決はこの相違点を看過している旨主張する。

ところで、成立について争いのない甲第四号証によれば、本願考案の願書に添附された明細書の実用新案登録請求の範囲の記載は、請求の原因二のとおりであるところ、そこには、軸受外輪体と合成樹脂製支持体との結合に関して、「合成樹脂製支持体9内に埋入成形して、同支持体と一体の材料を凹溝5内に喰い込ませ」と記載されており、これによれば、本願考案は合成樹脂製支持体と一体の材料を軸受外輪体の凹溝内に喰い込ませて外輪体と支持体とを結合させたものであると認められる。

他方、成立について争いのない甲第一号証によれば、第一引用例のものも、合成樹脂製溝付輪と一体の材料を軸受外輪体の凹溝内に喰い込ませて溝付輪と外輪体を結合させたものであると認められる。

そうすると、軸受外輪体と合成樹脂製支持体ないし合成樹脂製溝付輪とを、これら支持体ないし溝付輪と「一体の材料を喰い込ませて結合」した点において、本願考案と第一引用例との間に差異はなく、したがつて、両者を比較するには溝が偏心しているか同心であるかの点で異なり、その他の点では一致しているとして、その異同点を挙げれば充分で、殊更外輪体と結合される合成樹脂製支持体ないし合成樹脂製溝付輪の各突条部が偏心していることと同心状であることまでも相違点として挙げる必要はないから、審決がその相違点に言及していなくても、これをもつて審決が相違点を看過したものとすることはできない。

2 原告は、本願考案においても、第二引用例においても、クリープ防止の効果は、偏心溝と他の部材との組合せによつてはじめて奏しうるものであるから、両者を比較する場合に偏心溝に組合される他の部材の相違を無視することはできない旨主張する。

しかしながら、審決は、本願発明と第一引用例とを対比し、その相違点として、第一引用例のものが外輪体の外周面に同心状の溝を形成したのに対し、本願考案が外輪体の外周面に偏心溝を設けた点を挙げたうえ、右「偏心溝」の構成は第二引用例に示されている旨を説示しており、本件においてはその「偏心溝」に組合されるべき他の部材が何であるかは問題にならない。なぜならば、本願考案は外輪体を合成樹脂製支持体内に埋込成形して外輪体と支持体を結合させるものであるところ、合成樹脂製支持体内に外輪体を埋込成形して外輪と支持体とを結合させる点においては本願考案も第一引用例のものも同じであり、両者の異なる点は溝が偏心しているか同心であるかであつて、溝が偏心しているものは、第二引用例に示されているのであるから、その溝に嵌合さるべき部材が合成樹脂製のものであるかどうか、またその嵌合部材と、本願考案の部材9に相当する軸受箱2との材料が同一であるかどうかなどは、本願考案が第一、第二引用例の記載から当業者がきわめて容易に考案し得たものであるかどうかを判断するのには問題になり得ないからである。

3 原告は、本願考案は第一引用例及び第二引用例とは別異の簡明な構成によつてそれぞれの課題であるガタつき防止及びクリープ防止を同時に達成しえた点において格別の効果を奏するものである旨主張する。

しかしながら、本願考案の構成が第一引用例及び第二引用例のものとはそれぞれ異なるものであることは、審決がすでにこれを前提として判断しているところであり、本願考案が各引用例のものによつてもたらされる効果の総和以上の格別の効果を奏し得るものとは認められないから、原告の主張は理由がない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註その一」 本願考案に関する事項は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

原告は、名称を「輪体の回り止め装置」とする考案(以下、「本願考案」という。)につき、昭和四六年三月二五日実用新案登録出願をしたところ、昭和五〇年一〇月一三日拒絶査定を受けたので、同年一二月二七日これに対する審判を請求し、特許庁昭和五一年審判第三一八号事件として審理され、昭和五四年二月一四日出願公告(実用新案出願公告昭五四―三二六二号)されたが、昭和五六年二月七日右審判の請求は成り立たない旨の審決があり、その謄本は同年二月一八日原告に送達された。

二 本願考案の要旨

軸受外輪体2の外周面に、外輪体の中心に対して偏心する凹溝5を設け、これを所要形状の合成樹脂製支持体9内に埋入成形して、同支持体と一体の材料を凹溝5内に喰い込ませて外輪体2と支持体9を結合したことを特徴とする輪体の回り止め装置。(別紙図面(一)参照)

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面 (一)

<省略>

別紙図面 (二)

<省略>

別紙図面 (三)

<省略>

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