東京高等裁判所 昭和57年(う)174号 判決
被告人 石原晃三
〔抄 録〕
論旨は、訴訟手続の法令違反の主張であって、要するに、原判決は司法警察員作成の速度測定カード中の速度記録紙を実質上唯一の証拠として本件速度違反の事実を認定しているが、この速度記録紙のデータは特殊無線技士の資格がない風間真一郎巡査が速度測定機を操作して得たものであって、前記速度測定カードに記載されているように有資格者である佐藤博巡査が操作して得たものではなく、したがって違法な方法により収集された証拠能力のない資料であるのに、原判決はこれを証拠として被告人を有罪と認定したのであるから、この違法は明らかに原判決に影響を及ぼすものというべきである、というのである。
そこで、検討すると、法が無線局の無線設備である速度測定機の操作を特殊無線技士に限定しているのは、速度を測定される者の法益を特に擁護する趣旨ではなく、無資格者の操作により生じうる電波利用上の障害を防止する趣旨であると解されるから、かりに所論のように本件速度測定カード中の記録が無資格者により速度測定機が操作された結果得られたものであったとしても、そのことにより右記録が証拠能力に影響を及ぼす違法を帯びた違法収集証拠となるわけではない。のみならず、本件速度違反車両の調査に関与した原審証人佐藤博、同大谷五郎、同風間真一郎、同小河原隆の各供述によると、特殊無線技士の資格を有する佐藤博巡査が測定係を担当して速度測定機を操作し、風間真一郎巡査は速度違反車両の停止係を担当していたことが明白であって、これを疑うべき証跡は右証言中にこれをまったく見出すことができない。
(香城 杉山 植村)