東京高等裁判所 昭和57年(う)255号 判決
所論は、原審が、薗部義夫及び菊池清の検察官に対する各供述調書の提出を命じなかつたことをもつて、刑事訴訟法三〇〇条に違反し、その違反は判決に影響を及ぼすことが明らかである、と言うのである。
しかし、記録によれば、右各調書は、検察官から原審第一回公判期日において証拠調べの請求がなされたが、弁護人の同意を得られないところから、その請求がいずれも撤回され、前記両名の証人調べが行われたことを認めることができる。右証人取調べの結果、当該調書が被告人に有利な点を含み、かつ刑事訴訟法三〇〇条に該当する場合であつても、同条は、検察官に対し、当該調書の取調べを請求すべき義務を課したものに過ぎず、この場合において、検察官が右義務に違反したとしても、裁判所としては、あらかじめ検察官から当該調書の開示を受け、その内容を知悉している弁護人からその事実を指摘して申立てられない限り、検察官の義務違反の事実を知る由もないのであつて、原審裁判所に所論義務違反があつたものとは到底認め難い。