大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和57年(う)306号 判決

被告人 堀江光雄

〔抄 録〕

所論は、原判決が、その罪となるべき事実において、被害者笹沼秋一運転の普通貨物自動車(以下被害車両と言う。)は、青色信号に従って交差点に進入したと認定していることに対し、原判決挙示の証拠によっては、仮に被告人運転車両の対面する信号が赤色であったとしても、被害車両の対面する信号が青色であったとは必ずしも認め難いのであるから、原判決には理由不備の違法がある、と言うものである。

そこで記録及び証拠物を調査して検討すると、原判決は、罪となるべき事実として、被告人が、普通貨物自動車(以下被告人車両と言う。)を運転して、信号機の設置してある交差点を直進しようとする際、その対面する信号が赤色を表示していたのに、これを無視して、時速約八〇キロメートルの速度で交差点に進入した過失により、自車を右方道路から青色信号に従って交差点に進入してきた被害車両に衝突させ、同車を右前方に跳ね飛ばしてブロック塀に激突させ、右笹沼を脳挫傷により、間もなく同所で死亡させるに至った旨を認定判示していることが認められる。

そうしてみると、原判決は、「罪となるべき事実」それ自体としては、被告人が赤色信号を無視して交差点に進入した点に、その過失の存在を認定判示すると同時に、被害車両が青色信号に従って同交差点に進入したとして、被害者の落度の有無すなわち犯情に関する事柄に言及したものと解するのが相当である。

そして、刑事訴訟法三七八条四号にいわゆる「理由」とは、本件に即して言えば、同法三三五条一項の「罪となるべき事実」あるいは右事実にかかわる「証拠」を指称するものであるから、所論主張のような情状に関する事実が、偶々原判決の罪となるべき事実欄に記載されたからといって、これと証拠との不一致は、右三七八条四号に言う理由不備には該当しないと言わなければならない。従って、所論は主張自体失当であり、採用するに由ないものである。

(草場 半谷 須藤)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!