大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(ネ)2002号 判決

三 そこで、更に再抗弁について検討する。

前記1認定の事実を基礎として考えると、金野(編注・控訴人の代理人)はスクラップ(製鉄原料)の販売を営む者にすぎないこと(同人が金融を業とし、また、これを通じ大沢(編注・被控訴人の代理人)が信用することができない人物であることを認識していたと認めるに足りる証拠はない。)、本件消費貸借契約及び本件根抵当権設定契約を締結するにあたり、金野は被控訴人作成の白紙委任状、本件各土地の登記済証、被控訴人の印鑑証明書を大沢から示されて被控訴人からの委任を受けていると告げられていること(もっとも、司法書士は通常登記手続の委任を受けた場合に委任者から右のような各書類を預るものであり、その書類を濫用しているのではないかと疑う余地もあるが、本件においては被控訴人から一切を任されていると称し右白紙委任状とは別の被控訴人作成の受任者を山村(編注・訴外人)と明記した白紙委任状(≪証拠≫)を所持していた山村が終始大沢に同行していたのであるから、金野が大沢の所持する右各書類を単に登記手続のために預ったものでこれを濫用しているのではないかと疑わなかったとしても無理からぬことである。)、山村が持参し大沢が金野に示した本件各土地の登記簿謄本には、延納にかかる税額として合計六四〇万九七〇〇円の記載があり、大沢、金野らはこれを滞納税額の記載と考えていたものと認められるが、(弁護士である本件訴訟の各当事者の代理人がこれを滞納税額の記載として主張していることは本件記録に照らして明らかであり、大沢、金野らが右記載を滞納税額と考えたとしても不思議ではない。)、右のような多額な滞納税金があるのであれば被控訴人(又はその夫)に他に多額の負債があると金野が考えたとしても不自然とは考えられないこと、大沢は司法書士であり、一般人としては通常司法書士が不正な行為をするものとは考えないこと(ちなみに、原審における被控訴人本人尋問の結果によれば被控訴人自身大沢を司法書士であるということから信用していたと認められるし、また、前記1認定の事実によれば大沢自身は被控訴人から委任を受けていたと信じていたものであり、不正な行為をする意識はなかったものと認められる。)の事情があり、右のような事情のもとでは、金野が大沢に被控訴人を代理して本件消費貸借契約及び本件根抵当権設定契約を締結する権限があると信じたのも無理からぬものがあるから、大沢の代理権の有無につき被控訴人に確認する等の措置をとらなかったことをもって金野に過失があったということはできず、他に同人に過失があったことを示す事実を認めるに足りる証拠はない。したがって、再抗弁は、理由がない。

(香川 越山 村上)

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