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東京高等裁判所 昭和57年(ネ)2535号 判決 1983年11月17日

控訴人 古市滝之助

右訴訟代理人弁護士 宮本康昭

被控訴人 社団法人東京銀行協会

右代表者理事 荒木義朗

被控訴人 株式会社第一勧業銀行

右代表者代表取締役 羽倉信也

右両名訴訟代理人弁護士 奥野利一

同 稲葉隆

同 野村昌彦

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、控訴人代理人は、

1. 原判決を取消す。

2. 控訴人と被控訴人らの間において、控訴人が昭和五三年六月一六日付の取引停止処分を受けていない地位を有することを確認する。

3. 被控訴人らは控訴人に対し、連帯一二〇〇万円及びこれに対する昭年四月一九日から支払ずみまで年六分の割合による金員の支払をせよ。

4. 訴訟費用は、第一、第二審を通じ被控訴人らの負担とする。

との判決を求め、

二、被控訴人ら代理人らは、控訴棄却の判決を求めた。

第二、当事者の主張及び証拠関係

当事者の主張は、次の一ないし六のとおり付加、訂正するほか、原判決事実摘示第二のとおりであり、証拠関係は、次の七のとおり付加するほか、原判決事実摘示第三のとおりであるから、いずれもここに引用する。

一、原判決三枚目裏八行目の「不公正な取引方法」の次に「(以下、一般指定という。)」を加え、同九行目の「該当する」を「該当する行為をさせるようにすることに当たる」と、同末行の「『不当な取引拒絶』」から同四枚目表一行目の「要求するもの」までを「『不当な取引拒絶』にいう『不当』とは公正な競争を阻害するおそれがあるとの趣旨である」と各改め、同九行目の「矛盾するものではない。」の次に「そもそも信用取引の秩序維持は、手形法等の国家法制の整備などによって行われるべきものであり、かつ現に行われているものであって、『公益目的』の実現は、一事業者団体にすぎない手形交換所のなすべきことではない(手形法、小切手法も、手形交換所を支払呈示の場として位置づけているだけで、それ以上の役割を負わせているわけでも期待しているわけでもない。)。」を加える。

二、原判決四枚目裏一〇行目の「同法」を「適用除外法」と、同五枚目表一〇ないし一一行目(末行)の「危険の防止のために」を「危険を予め取り除いて金融機関自身の取引の安全を図るために」と、同裏一行目の「生まれた制度」を「生まれた私的な利益保護のための制度(手形交換所がいかに多数の金融機関によって構成されていても、『私的』であることに変わりはない。)」と、同四行目の「手形交換所に与えられた業務であるにすぎない。」を「手形交換所が取扱うことになった附随的業務であって、手形交換に必然的に随伴するというものではない。」と、同六枚目裏三行目の「一五日」を「一三日」と各改め、同九枚目表四行目の「回答しているのであり、」の次に「更に加盟銀行は容易に取引に応じないのが実情であって、」を加える。

三、原判決一〇枚目裏四行目の「ある事業者から」を「ある事業者に対し」と改め、同一一枚目表八行目と九行目の間に次のとおり加える。

「控訴人は、取引停止処分は、金融機関自身の取引の安全を図るための私的な利益保護の制度であると主張するが、手形、小切手による信用取引は、金融機関だけが行うものではなく、経済人ないし企業であれば誰もがこれを行っているものであるから、手形制度の信用維持を図ることは、金融機関自身の取引の安全のみを守るものではなく、経済界の信用取引の安全を守るという公益目的に資するものであることは明らかであって、現に、取引停止処分制度の運用によって手形交換所が手形制度の信用を維持していることは公知の事実である。」

四、原判決一一枚目裏六行目の「事業」を「主要な事業の一つ」と改め、同一二枚目表五行目の「全くないこと、」の次に「(5)取引停止処分が除外されないとすれば、当然これを排除するような法的措置がとられるはずであるのに、今日に至るまでそのようなことがないこと、」を、同一四枚目表三行目末尾に「従って、控訴人自身、資金不足による不渡届の提出を承認していたものであり、そうでないとしても、右のとおり控訴人から包括的に代理権を与えられていた右訴外人が控訴人の代理人として承認したものである。」を各加える。

五、原判決一五枚目表五行目冒頭の「被告」の前に「前記三4(二)の被控訴人らの主張につき、」を加え、同六行目の「右承認」から同七行目の「与えたこと」までを「控訴人の銀行取引のすべてについて控訴人が訴外平弥一郎に包括的に代理権を与えていたこと」と改める。

六、原判決二三枚目表八行目の「振出日」の次に「昭和五三年二月一五日」を加える。

七、原判決一五枚目表末行の末尾に「(但し、甲第五号証の満期欄の記載の訂正は無権限でなされたものである。)」を、同裏末行の末尾に「(甲第五号証の満期欄の記載の訂正部分も真正に成立したものである。)」を各加える。

理由

当裁判所も、控訴人の地位確認の請求にかかる訴えは法律上の利益を欠くものであり、損害賠償請求は理由がないと判断するものであるが、その理由は、次の一ないし五のとおり付加、訂正するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これをここに引用する。

一、原判決一六枚目表末行ないし同裏一行目の「信用取引」を「当座勘定及び貸出の取引」と改め、同裏一行目の「東京手形交換所規則」の前に「成立に争いのない乙第一号証によって認められる」を加え、同三ないし四行目の「信用取引」を「右の取引」と、同九行目の「信用取引」を「取引」と、同一〇行目の「取引停止処分が与える影響は二年間にとどまる」を「取引停止処分によって被処分者が蒙る不利益は取引停止期間の満了によって消滅する」と、同一七枚目裏二行目の「本件訴え」を「本件地位確認の訴え」と各改める。

二、原判決一七枚目裏七行目の「手形交換所」から同八行目の「業務は」までを「手形法及び小切手法の規定により指定されている手形交換所(東京手形交換所は右指定交換所である。)に対しては、その『固有な業務を遂行するに必要な範囲』に限り、」と改め、同末行の冒頭に「前示」を加え、同一八枚目表二行目の「収拾」を「収集」と改め、同一〇行目の「取引停止処分は、」の次に「正当な理由のない手形、小切手の不渡り(その被害者すなわち手形、小切手によって支払を受けられない者は、金融機関であることもあれば、それ以外の手形、小切手の所持者であることもある。)の続出は手形制度に対する信用を失わしめることから、経済界において広く行われている手形、小切手による信用取引の重要性に鑑み、」を加え、同裏七行目の「金融機関」から同八行目の「信用維持」までを「金融機関自身の取引の安全を図る私的な利益保護のための便宜的な制度ではなく、手形、小切手による信用取引を行う者(金融機関も含む。)全体のために、経済界において広く行われている右信用取引の安全を守り、手形制度の信用維持を図る」と改め、同一九枚目表一行目の「経済界において」の次に「手形交換業務と並ぶ手形交換所の主要な業務として」を加える。

三、原判決一九枚目表三行目から同一〇行目までを次のとおり改める。

「これらの点からすれば、手形交換所に固有な業務を遂行するに必要な範囲に限って交換所に対し独禁法第八条の適用を排除することを定めた適用除外法第二条の規定は、手形交換所が取引停止処分制度を運用する場合も含めて適用されると解するのが相当であるから、控訴人の前記主張は、これを採用することができない。

のみならず、取引停止処分制度について右に説示したところからすれば、取引停止処分制度をもって独禁法の意図する公正な競争を阻害するおそれのある不公正な取引方法(第二条第九項。一般指定第一号にいう「不当な取引拒絶」)に該当する行為をさせるようにするものとはなし難い(同法第八条第一項第五号。なお同項第四号にいう「不当に制限すること」に当たるともなし難い)ところといわざるをえないから、そもそも同法第八条に違反する廉は存しないものというべく(このように解すると、前記適用除外法の規定は、取引停止処分に関する限り、独禁法の適用のないことを確認して疑問の生ずることを払拭した規定としての意味しか有しないことになる。)、控訴人の主張は、既にこの理由からも、排斥を免れない。」

四、原判決一九枚目裏第三行目の冒頭に「満期欄の記載の訂正部分を除き」を加え、同七ないし八行目の「原告の代理人である」を「控訴人の銀行取引すべてにつき包括的に代理権を与えられていた」と、同末行の「求められたが、」を「求められたので、被控訴人第一勧業銀行は偽造を理由に返却する手続を進めていたが、」と、同二〇枚目表一行目の「夕刻」から同二行目の「しかも」までを「夕刻になって返却理由の変更を求め、改めて同日付書面(乙第三号証)をもって、『偽造にて返却をお願いしたが、都合により資金不足にて返却されたい』旨依頼し、しかも現実に」と、同八行目の「付した事実」を「付したこと、なお、前記平は、右のとおり資金不足による返却を依頼した翌日の六月一四日、別口の不渡手形について控訴人がしていた異議申立の取下げと異議申立提供金の返還を要請したので、被控訴人第一勧業銀行の担当者は、そのための書類が整った翌一五日、電話で控訴人に経過を説明するとともに右手続をとることの確認を求め、控訴人から平にすべて任せてある旨の回答を得たうえ、東京手形交換所に対し、右異議申立の取下げを請求し、同手形交換所から異議申立提供金二五〇万円の返還を受けてこれを平に返還したこと」と各改める。

五、原判決二〇枚目表末行の「甲第五号証によれば、」を「前掲甲第五号証の」と、同裏六行目の「書面証券」を「文言証券」と各改め、同末行の「相当である」の次に「(控訴人は、原審における本人尋問において、本件手形の振出人である東駒ベーシック清酒株式会社(代表取締役井上久寿男)が、引受人欄の記載後に右満期欄の訂正をしたとする趣旨の供述をするが、措信できず、他に右振出人が振出し後に受取人に交付された本件手形につき訂正をする機会を得たとの事実を認めるに足る証拠はないから、事実上も控訴人の引受けは右訂正後であったとするほかはない。不渡届の提出に至る経緯につきさきに認定判示した事実も、結局右推認の正当性を裏付けるものであり、まして控訴人側からの要請に基づいて手続を進めた被控訴人第一勧業銀行が、六月一三日の呈示を期間内の呈示として扱う前提として、満期の変更の記載が適法になされたものとみたことについては、同被控訴人には何らの手落ちもないといわなければならない。)」を加え、同二一枚目表五ないし六行目の「六月一〇日なので」を「六月一〇日(土曜日)とみてしかるべきで」と改め、同七行目の「原告」の前に「本件手形につき」を、同九行目の「認めることはできない」の次に「(却って、控訴人から包括的に代理権を与えられていた平は、不渡届に対する異議申立(東京手形交換所規則第六六条)をする余地のない資金不足を理由とする本件手形の返却を依頼したこと前示のとおりである。)」を各加える。

よって、控訴人の地位確認の請求にかかる訴えを却下し、損害賠償請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横山長 裁判官 野崎幸雄 水野武)

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