東京高等裁判所 昭和57年(ネ)2864号 判決
二 控訴人らは、本件係争部分は性質上本件マンシヨンの共用部分であり、したがって、本件係争部分については、本件マンシヨンの区分所有者である控訴人らにおいて共有持分を有するものである旨主張し、被控訴人は、本件係争部分は専有部分であり、被控訴人の所有に属するものであると主張するので検討する。
1 まず、前記のとおり本件マンシヨンが完成した昭和五〇年二月一日ごろの本件係争部分の構造ないしは四囲の状況を見ると、本件係争部分は、図面(一)(二)のとおり、本件マンシヨンの中央部分に位置し、全体として東西に細長い形状であり、後記認定の本件マンシヨンの一階床面積八七六・八九平方メートル(登記簿上床面積が八七六・八九平方メートルとなつていることについては、前記のとおりである。)のうち五〇二・五六平方メートルを占めていること、後に本件シャッターが設置された各部分、すなわち、図面(一)のナ・ラ、ラ・イ、イ・ロ、ロ・ハ及びヨ・タの各線上には、右各符号の箇所に本件マンシヨンの主柱が存在するほか、シャッター等のしゃへい物は何もなく、右ヨ・タ点にある各主柱間と同ナ・ラ点にある各主柱間とは、それぞれ開口部として本件マンシヨンの東側、南側各公道との出入口となっていたが、その余の部分は、図面(二)のとおり、南側主柱線の南側には、その中央部分に二階孔雀苑(後記中華料理店)への階段、西側に店舗A・Bがあり、中央主柱線の北側には北側諸施設が設置されているほか、更に、右諸施設と本件マンシヨン北側に立ち並ぶ主柱の列との間には東西に通じる避難用通路があり、他方、本件係争部分と南側の孔雀苑用階段、店舗A・B及び北側諸施設との間は、それぞれ約二四ないし二八センチメートルの鉄筋コンクリート又はコンクリートブロックにより隔壁が堅固に構築されていることは、すべて当事者間に争いがない。そして更に、《証拠》によれば、本件係争部分の床部分は全面にわたってコンクリートが打たれ、天井は本件マンシヨン二階の床と一体を成す鉄筋コンクリート造りであること、図面(一)のハ・ニ、ト・チの各線上も外部との隔壁が前同様堅固に構築されていること、前記イ・ロ線の北側、同ロ・ハ線の西側は図面(二)に示すとおり空地部分となっているが、前記ラ・イ線及び右空地部分の西側には万年塀が、右空地部分の北側はブロック積みの障壁ないしはフェンスが、それぞれ設置されていて、各隣地との境界が画されており、各隣地との出入りは不可能であることが認められる。右認定を左右する証拠はない。
2 次に、本件係争部分の用途についてみるに、《証拠》によれば、本件マンシヨンは、第一、第二目録記載のとおり、一三階から成る鉄骨鉄筋コンクリート造りであり(一二階、一三階は塔屋)、四階から一一階までに住戸として一般に販売された各専有部分があるが、一、二、三階は右住居階域との関係から共用部分となる部分を除いて被控訴人の所有として保留し、二、三階は孔雀苑という商号で中華料理店及び結婚式場を営むための階とし、本件係争部分は、右各営業用の駐車場として前記開口部によって他の専用部分を経ることなく直接公道との出入りができ、他方、前記住居階域と外部との出入りのために駐車場としての利用を妨げられることもないように、設計・施工がされていることが認められる。右認定を左右する証拠はない。
3 右1、2の事実関係によれば、本件係争部分は、必ずしも周囲すべてがその外側と完全に遮断されているわけではないが、建物の構成部分である主柱、隔壁、天井、床等のほか四囲の模様との関係により、独立した物的支配に適するように本件マンシヨンの他の部分から区分けされており、その範囲を明確に識別できる状況にあり、他方、本件係争部分は、もともと駐車場として利用することが予定され、そのための独立の出入口を有し、直接公道に通じているものであることが明らかである。したがって、本件係争部分は、建物の区分所有等に関する法律にいう、一棟の建物のうち構造上他の部分と区分され、それ自体として独立の建物としての用途に供することができる建物部分であり、建物の専有部分として区分所有権の目的となるものであって、構造上当然に本件マンシヨンにつき区分所有権を有する者の共用に供されるべき性質のものではないというべきである。
4 なお、前記1の事実認定の資料として挙示する各証拠によれば、本件マンシヨンが完成した当時、本件係争部分と前記北側諸施設との間の隔壁の一部には玄関ホールとの間の、前記ニ・ホ線上の隔壁には前記避難通路との間の、各出入口がそれぞれ設けられ、また、本件係争部分の床の一部には、貯水槽口、排水用マンホールが、天井近くの一部には、隔壁や天井を貫いて各種パイプのほか、隔壁にはめ込むように前記店舗A・B用の冷房設備が、それぞれ設置されたことが認められるが、これらの諸設備は、本件係争部分全体に対する関係では極めて小部分であり、それらの存在によって本件係争部分に特段構造上の変動が生じているものではないし、第三者がそれらを利用・管理することによって本件係争部分を駐車場として使用するのに格別の不便や障害が生じることもなければ、反面、本件係争部分を駐車場として利用したからといってそれら設備の保存・利用に影響があるとも認められないから、本件係争部分に前記諸設備が付設されていることを考慮に容れても、本件係争部分の性質についての叙上認定説示の妨げとはならないというべきである。
(後藤 奥平 橋本)