東京高等裁判所 昭和57年(ネ)3109号 判決
右事実によれば、被控訴人は、高野一之から別紙目録(四)の土地の一部であった本件土地上に存する未登記の本件建物の贈与を受け、本件土地の賃貸人である訴外崇の承諾を得て本件土地の賃借権を譲り受けたが、登記については、既に取壊し済の(三)の建物が登記簿上は本件土地上に残存する形となっていたことから、右(三)の建物につき所有権移転登記を経由しておけばよいと思ってその手続をし、本件建物は未登記のままにしていたところ、昭和五四年夏、別紙目録(四)記載の土地上にアパートを建築することを計画した訴外崇が右建築工事の下請をすることになった大和技建工業の代表者である控訴人に不足する建築資金の調達について相談をした際、行政書士の資格も有する控訴人は、本件土地上には本件建物が存在し自動車整備工場として使用されていることを熟知しており、かつ訴外崇から本件土地は被控訴人に賃貸中であることを知らされながら、登記簿の閲覧により、(三)の建物については所有権移転登記が経由されているが本件建物は未登記であって被控訴人の賃借権は対抗要件を具備していないことを発見するや、本件土地を第三者に売却する方法をとれば被控訴人に明渡しを求めることができることになって有利であるとし、自ら右第三者となることを買って出て、本件土地を控訴人に売却して前記アパートの建築資金に充てることを慫慂し、控訴人が自ら使用する格別の必要性はないのに、被控訴人の法律知識の不足に原因する対抗要件の欠缺に乗じて買受けの上は直ちに被控訴人に本件土地の明渡しをさせる意図のもとに、自らの指示により自己の経営する会社の関係者を使って測量したうえ、別紙目録(四)の土地から殊更本件建物の敷地部分すなわち本件土地部分だけを分筆させてこれを訴外崇から買い受けたといわざるを得ず、かかる控訴人に、本件土地の賃借権者たる被控訴人がたまたま借地権の対抗要件として建物保護法が予定する有効な建物の登記を経由していなかったからといって、その借地権を否認することを許すことは、著るしく信義に反するところであるから、控訴人は、いわゆる背信的悪意者として、本件土地に対する被控訴人の賃借権につき対抗要件の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者には当たらないものというべく、被控訴人は、右賃借権をもって登記等の対抗要件なくして控訴人に対抗することができるものといわなければならない。
(横山 野崎 水野)